日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第384夜 霊界通信

水曜の朝に観た短い夢です。

目を開くと、テーブルの前に座っていた。
頭がぼんやりして、はっきりしない。
「おお。ここはどこだろ」
それ以前に、オレは一体誰だろ。

次第に脳が働くようになって来る。
オレは畑中マモルという名前だった。
年齢は35歳で、自分の会社を経営している。

テーブルの上には、紐で括った小石が置いてある。
勾玉の穴に細い紐を通したものだ。
それと、何やら数字を書いたカードが散らばっていた。

「一体、これで何をやっていたんだろ」
周りを見回す。
どうやらマンションの一室だ。窓際に行くと、外が見える。
かなりの高層マンションだった。
ほとんどの建物が下の方に見えていた。

部屋の中を歩き回る。
マンションの割には部屋数が多くて、4LDKだった。
「マンションの部屋って、殆どが3LDKかと思っていた」
どの部屋に行っても、生活臭が乏しい。
家族がいないのだ。
「だが、女はいるようだ」
寝室のベッドサイドに、女物の下着が落ちていた。

リビングに戻る。
「さて、オレは一体、何をしようとしていたんだろ」
小石を手に取る。
水晶の勾玉だ。これに紐を通して何をすると言うのだ。
糸をつまんで、持ち上げて見る。
「まるで振り子だな」
ここで気が付いた。
数字のカードと、水晶の振り子。
なるほど。オレはダウジングをやろうとしていたのだ。
ダウジング」は占いの技術のひとつで、かつては水脈を探したり、金鉱脈を見つけるために用いられたものだ。占いと言うより、潜在意識を鋭敏にし、直観力を高める方法と考える方が科学的だろう。
やり方は様々で、木や金属の棒を使う方法もあれば、振り子を用いることもある。
ここにある道具なら、数字のカードを下に置き、その上に振り子を垂らして、その数字がイエスかノーかを訊いて行くというやり方だろう。
カードは37枚で、1から37までの数字が書いてあった。

「1から37。ってことはロトだな」
オレはダウジングを使って、ロトの当選番号を占おうとしていたのだ。
すなわち、金が要るってことだ。
ここで思い出した。
オレは事業をやってるが、急に金が必要になった。それも億に近い金で、1週間以内に準備する必要がある。
銀行に借金を申し込んでいたのでは、とても間に合わない。
民間の金融機関から借りると、すぐに信用情報が伝わり、事業自体の参加資格が無くなってしまう。
仕方なく、明日が抽選日のロトを占おうとしたのだ。

何せ、オレには霊感がある。
オレの唯一の才能と言っても良いくらいだ。
交通事故や火事の起きそうな場所は前を通り掛かるだけで分かるし、いつ誰がそうなるかも感じ取れる。
そのために、何度か自分自身の命の懸かった危機を回避できたし、身近な人の危機も救った。

「なんだ。簡単な話じゃん」
だが、心のどこかに躊躇する気持ちがある。
「副作用のようなものがあるからだな」
何かを知り、先の運命を変えると、替りに失くすものが生まれる。
自分自身の心臓の発作を予見した時には、ぎりぎりのところで命が助かったのだが、病院を出てみたら、家が火事で焼けていた。隣家の火事に巻き込まれたのだ。
親族に起きる事故を予見し、それを止めたら、その日のうちにオレの車に他の車が飛び込んで来やがった。
基本的に、起こるべき未来を変えてはいけないのだ。
それを変えるから、酷い「しっぺ返し」が来るわけだ。
オレはそう思う。だから、これまでこういうことはやらないで来たわけだ。

実際、酷い目に遭ったことも多い。
大学生の時に、仲間と冗談で「こっくりさん」をやったことがある。
サークルが終わった後で仲間の家に行ったのだが、することが無く暇だったのだ。
オレがやると、サークルの中で誰と誰が付き合っていて、どの程度の関係かってこともピッタリ当てられた。
しかし、すぐさまその影響がやって来た。
その夜のうちに、そこの電話に、しつこく無言電話が掛かって来たのだ。
十分置きくらいに電話が掛かるが、受話器を取っても誰も出なかった。
「まったく。悪戯なんかしやがって」
その家の主の学生が愚痴をこぼす。
「最近、こんなのは無かったのにな」
別のヤツがここで口を挟んだ。
「ナンバーディスプレイにしてたんじゃないのか」
「あ、してるしてる」
「ならどこから掛かって来たか分かるだろ」
主が着歴を調べる。
「〇〇〇の××××だな」
その時、オレの背筋にぞわっと怖気が走った。
「それって、オレの携帯の番号じゃないか」
こっくりさんで悪霊を呼び寄せていたのだった。
悪霊はそれから半年くらいの間、オレにつきまとっていたが、ある日突然いなくなった。
こういった理由から、それ以後、ダウジングみたいな占いは極力やらないようにしていたのだ。

「だが、背に腹は替えられない。今はそれこそ火急の時だ。金を準備出来れば、短期間で事業を拡大できるが、出来なければ尻すぼみになってしまう。このままでいるわけにはいかない」
オレはカードの上に振り子をかざした。
何枚かのカードの上では、振り子が著しく揺れたので、オレはそれをメモした。
おそらく、これは直近の当選番号に違いない。
すぐにその先の光景が浮かんでくる。

オレは次のロトで、6つの数値を当てる。
最高の賞ではないが、これで7千万くらいの金が入る。
オレの頭の中では、銀行に換金しに行くオレの姿がはっきりと見える。

「ふう」
ため息を吐いて、キッチンに行き、コーヒーを淹れた。
コーヒーが出来ると、それをカップに入れてテーブルに運び、オレは椅子に座り直した。

カップをテーブルに置くのとほとんど同時に、オレの携帯電話がぶるぶると震えた。
携帯を持ち上げようとするが、その手が止まった。
なんとなく、オレの近しい人、身内か知り合いの誰かが、たった今、死んだような気がする。

ここで覚醒。