日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第425夜 究極の選択

◎夢の話 第425夜 究極の選択

 瞼を開くと、オレは椅子に座っていた。
「ここはどこで、オレは誰だろ」
周りを見回すと、空港の待合室のようなところだ。
おぼろげながら記憶が甦って来る。
 「オレはどこか外国に行く途中で、ここにはトランジットで降機している」
 確か4時間待ちだったような気がする。
 待ち時間が長いので、椅子で眠り込んでいた訳だな。

 唐突に男たちが現れる。全員が制服姿だ。
 一番偉そうな男がオレの前に立った。
「お前を逮捕する」
「え?何で。どういう容疑だよ」
「お前は政府転覆を企図し破壊工作を行った」
 ありそうな話だが、でも、オレはこの国には寄り道しただけだ。
「オレはただの旅行者だよ」
この国じゃあ、ということだが。

 「そんなことはどうでもよい。我々には犯人が必要だ」
 正直なヤツだな。「誰でもいい」と言ってらあ。
「お前には審判を受けて貰う」
 ま、オレはここのロビーから一歩も出ていない。裁判を受ければ、「何もしていない」と証明できるだろ。
「裁判ならいくらでも受けるけど、無罪だったら賠償してもらうよ」

男がオレの眼を見る。 
「裁判?そんなものはない。裁判ではなくて審判だ」
「審判。その審判って何のことだよ」
「お前は、チーターとライオンと熊のうちどれにする?自分で選べ」
「何でここで動物が出て来るんだよ」
  まあ、ここはそういう動物がいる国だが。
 「チーターの区画はハンデ二百。ライオンはハンデ三百。熊は五百だ。お前が食い殺されずに20分の間逃げ切れば、お前は無実。無実でなければ、判決は死刑だ」
「食い殺されるってことか」
「その通り」
 なるほど。容疑者に「焼けた砂利の中に手を入れさせる」審判と同じだ。
もし真犯人なら神が刑罰を与える方式だ。神を信じていれば、心理的影響が生じる。
「でも、動物なら、本人が躊躇するかどうかは関係なく、ただ食われるだけじゃね?」 
 男はオレの言葉を聞いて、ニヤリと笑う。
 やはり誰でもいいから、見せしめ用の犯人が1人欲しいわけだな。
「3分以内に決めろ。決められなかったらこの場で銃殺だ」

 オイオイ。それなら誰でも何か選ぶだろ。 
 オレは必死で考えた。
 チーターは百辰鬘魁■管辰覗?襪、そのスピードでは2百辰靴走れない。
だから、一瞬の足は遅くとも4、5百辰魴兮海靴徳?譴襯薀ぅンにやられてしまう。
 ライオンなら百辰鬘局辰らいだろうが、もちろん、人間よりかなり早い。
 熊のハンデが5百と言うのは、熊は走る速度が時速60舛らいしか出せないが、2キロは走り続けることが出来るからだな。5百探?イ鮹屬い燭箸海蹐如見通しの良いサバンナなら追い付かれてしまう。
 頭数はどうだ。チーターなら概ね2匹、ライオンは家族で暮らしている。熊は1頭だけだ。
 最適効率を考えるのは、3分では無理だな。

絶望的だ。
 オレはがっくりして、空港の窓から外を眺めた。
 ここでパッと閃いた。
チーターだ。チーターにする」
 2頭なら、まあなんとか。

 草原には一面に蒲の穂が揺れていた。 
 蒲の穂のかたちは、いつもオレが家のペットと遊ぶ時に使う「猫じゃらし」にそっくりだった。

 ここで覚醒。

 こういう感じのショートショートは誰かが書いていたなあ。
 星新一さん?
 
 しかし、夢を観る直前に考えていたのは、原発事故のことです。
 「どれを選んでも不都合」から展開したものでしょう。