日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第534夜 別離

◎夢の話 第534夜 別離
 元日の午前2時に観た夢です。
 年が替わっていますが、31日の夜の扱いとなり、初夢ではないらしいです。
 初夢は元日の夜に観る夢だということ。

 瞼を開くと、大学風の敷地の中にいる。
 「でも、学生じゃないよな」
 背広を着ているしな。
 「しかも、これは夢の中だろ」
 オレの夢には時々あるが、夢を観て、自分がその夢の中にいるという自覚があった。

 女が現れる。
 かなり前に付き合っていたことのある女だった。
 「でも、夢に出る最初の異性は自分自身だ。すなわち、これはオレの自我が変化したひとだよな」
 オレはベンチに座っていたが、女はオレの隣に腰掛けようとはしなかった。
 前に立ったまま、腕組みをしてオレを眺める。
 分かりやすい女だ。話を聞かなくとも、何を伝えようとしているか分かる。
 「別れましょう」てな感じのことだ。

「ねえ」
「何?」
「私たち。別れましょうか」
 オレは女を見上げて答える。
「いいよ」
 女は二秒くらいの間オレのことを見た。
「そう」
 オレが何か言うと思っていたらしい。
 だが、このことをオレは半年前に予期していたので、別に意外ではなかった。
「いいの?」
「ああ。別にいいよ」
 女は少し拍子抜けしたような表情を見せたが、そのまま背中を向けて去って行った。

 オレは行動心理学を研究しているので、女が言わない事実を掴んでいた。
 「男が出来た」
「40歳台のバツいち」
「事業主で羽振りが良い」「エネルギッシュ」
 20歳代半ばの女にしてみれば魅力的だな。
 特に、取り立てて何も無いオレのような男と比べれば歴然だ。
「だが、事業欲は性欲に近い場所にある。一人の女を守ることはない」
 それを女が知っているかどうか。

 オレの方も、この女が長く付き合える相手ではないと自覚していた。
「だから、半年掛けて、会話の端々に相手を否定するような言葉を入れていたわけだし」
「そうかなあ」「どうだろう」てな曖昧な言葉だ。
「違う」と言ってしまうと議論になり、問題は解決してしまうことが多い。
 問題を解決させずに、腹に溜まるようにすると、次第に相手のことが嫌いになって来る。
 相手が別れを切り出してくれると、その後のケアが不必要になるから、かなり便利だ。

「明日の朝。目を覚ましたら、きっと爽快だろうな」
 この半年の懸念が解消されているのだから、気分が晴れるのは間違いない。
 数年付き合った相手と別れるのは悲しいが、いずれにせよ、反りが合わない相手とは、必ず別れが来る。

「しかし、あの女はオレだ。この夢の意味は何だろう」
 この年齢のオレは、「何ひとつ持っていない自分」の象徴だろう。
 能力は低いし、財力も無い。
 女(オレ)が企業家の男を選ぶということは、「いまだビジネスに興味を持っている」ということなのか。
 この辺でうっすらと気が付いて来る。
「夢の中で具体的な行動を起こしているのは、あの女だ。あの女はオレの化身だから、オレの夢の中の主体と言えるのは、このオレではなくあの女のほう。すなわち、今のオレはただの象徴で、存在していない。存在するのはあの女で、あれがオレの本当の自我というわけだ」
 何と、「オレは自分が夢の中にいることを自覚している」のではなく、単なる夢のアイテムのひとつに過ぎなかったのだ。
 この世界では「オレ」は存在していない。あるのは仮の意識だけだった。
ここで覚醒。

 「我思っても、我は無い」可能性があるということです。
 あけましておめでとうございます。