◎『鬼灯の城』の話の流れ
現在、『鬼灯の城』は、盛岡タイムス紙上で次のように進行しています。
1)「呪い師」
釜沢館主・小笠原重清の許に、破戒巫女である杜鵑女(とけんにょ)が現れた。
杜鵑女は師の柊女によって破門され、流れ巫女として、釜沢館の搦手門の近くで倒れていたのだ。
重清はその杜鵑女の扱いを思案するが、杜鵑女が予言めいたことを口にしたので、ひとまず呪い師として館内に置くことにした。
2)「邂逅」 ※「邂逅」は「出会い」の意。
杜鵑女の言に従って、重清は三戸城下を訪れた。
すると、重清が幼き頃に死んだと思っていた妹が生きており、商店の女将になっていた。
総てが、杜鵑女の言った通りだった。
重清は杜鵑女の言に従い、隣接する目時館と人質の交換をする。
人質は双方とも館主夫人である。
重清は目時館主夫人の登場で心を揺さぶられる。
『マクベス』の冒頭で、魔女が「綺麗は汚い。汚いは綺麗。さあ飛んで行こう 霧の中 汚れた空をかいくぐり・・・」という象徴的なフレーズがありますが、これも一部を使っています。
3)「揺蕩」 (ようとう・たゆたい) ※「揺蕩」は揺れ動くこと。
秋が深まった頃、釜沢館の家来・用人が毒茸に当たる。
重清も茸の毒で苦しむが、人質の目時夫人・桔梗によって介抱される。
桔梗はほとんど意識の無い重清の体を清拭し、その体に愕然とした。
病気がちな夫と違い、重清は鋼のような体躯をしていたのだ。
桔梗は夜毎に重清の肉体を思い起こし、悶々とする。
<この先(4章)以降の解説>
男が道を踏み外すのは、やはり欲からで、その最たるものが「色欲」。
この先は、隣接する他領との間で諍いが生じ、重清は兵を率いて出陣します。
この頃、重清は桔梗と男女の関係になっていました。
ひとまず四戸を追い払うと、次は宿敵の目時と対峙します。
目時には、重清の正室・雪路が人質になっています。
ここからは『マクベス』で御馴染みの展開で、褥の中で桔梗が重清に囁きます。
「目時筑前を殺して下され」
それはすなわち正室・雪路を見捨てることを意味します。
重清は桔梗の言葉に従い、杜鵑女に毒を作らせ、目時筑前を暗殺します。
筑前の子・忠則(桔梗の従弟)は、そのことを知ると、直ちに、敵方の人質(重清の正妻・雪路)の首を刎ね、復讐を誓います
「おのれ小笠原淡路。貴様と毒婦桔梗の首を、必ずや釜沢館の門に掲げてやるぞ」
忠則は南部信直に事態を報告し、ひとまず、自らは「筑前守」の名跡を継承するのです。
一方、南部信直は、九戸と緊張状態にあり、小領同士の境界争いに関わっている場合ではありませんでした。
信直は、東信義に釜沢・目時の調停を任せます。
天正十九年の年が明け、重清は南部、九戸の双方から「年賀式」への出席を要請されます。
その時、杜鵑女は前言を翻し「いずれの式にも出るように」と重清に進言します。
三戸九戸の中間にある釜沢にとって、選択肢は、双方に出るか、出ないかの選択肢のみ。
片方だけに出れば、たちまち「敵側」と見なされてしまいます。
さて、重清は・・・。
こんな展開です。
かなり形が変わっていますが、基本のシナリオラインは『マクベス』に従っています。
後半のモチーフのひとつ、「人が生した子には殺されぬ」という予言も、かたちを変えて登場します。
全八章から十章程度の構成になると見込まれます。
ドラマの基本は、「生と死」「愛か別れ」「戦い(政治)」で、これに「神(自然)」が関わります。
シェークスピアはそのお手本なので、「4大戯曲の内容を箇条書きに書く」練習をすると、誰でも半年くらいのうちに難なく小説が書けるようになります。もちろん、上手下手は別ですが、まったく苦痛を感じず、スラスラと書けるようになるのです。