日刊早坂ノボル新聞

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夢の話 第600夜 お葬式

夢の話 第600夜 お葬式
 29日の午後3時に、仮眠中に観た夢です。

 山田さんが死んだ。
 山田さんは、私の会社の同じ課の職員だ。
 五十台の半ばだが、ヒラ。今の課長は山田さんよりも、だいぶ後輩にあたる。
 その課長の指示で、私、小川信子と同僚の菊池司郎がお葬式に参列することになった。
 私は30台半ばで中堅だし、菊池君に至っては、まだ入社三年の新人だ。
 要するに、それで山田さんの立場が分かるだろう。

 驚いたことに、山田さんはT大の出だったらしい。
 T大出がうちの会社に入ること自体、かなり珍しいのだが、まったく出世しなかったというのもびっくりだ。
 山田さんは学者肌で、人付き合いが不得手だ。営業も下手だし、ウチみたいな物販が本業の会社では、どうしても浮いてしまう。
 世渡りが下手だったということだ。
 まあ、T大出の医者でも、臨床がとてつもなく下手で、非常勤を渡り歩いている医者はいる。世間にはそういうのはごくざらにいるから、高学歴がその後の昇進を左右するのは、公務員だけだと言える。

 「しかし、部下の葬式なんだし、課長も顔を出すべきですよね」
 菊池君が私に顔を寄せて、囁くように言った。
 「まあ、今は大きな取引を控えているし、課長さんも忙しいんでしょう」
 しかし、菊池君は頬を膨らませている。
 「通夜に顔を出したって、ほんの2時間かそこらですよ。課長は自分が新米の頃に、山田さんには世話になったはずなのに、来ないのは釈然としません」
 「まあ、色々と事情があるんだから」
 私は菊池君を宥めるのに精一杯の言葉を尽くす。

 通夜が始まった。
 喪主は奥さんで、子どもが2人。一人はまだ中学生くらいだった。
 「気の毒に。心筋梗塞で突然、お父さんが死んだら、あの子たちは苦労するでしょうに」
 さすがに、心が痛い。
 喪主の挨拶では、山田さんの日頃の暮らしぶりが紹介されていた。
 やはり、「仕事バカ」で、会社が扱っている機器の欠陥を直す方法を研究していたらしい。
 「そう言えば、山田さんは毎日遅くまで残っていましたよね。そのためですか」
 「タイムカードは6時に押していたけど、そのまま会社にいたようだわね。毎日十時十一時。午前さまだってしょっちゅうだったかもしれないわ。誰もそこまで残ってはいないから、知り得ない話だけどね」
 「そう言えば、自分が何とかしないと会社が潰れる。それどころか、沢山の被害者が出るかもしれないと言っていましたね」
 思わず溜め息が出る。
 「そういうのって、あのバカ課長には見えないのよね」
 「まったくです。だいたい、残業をしている社員を横目に、自分はさっさと帰りますし」
 誰が褒めてくれるわけでもないのに、山田さんは自分の身を削って研究をしていたのだ。
 「ああ。課長の言うことが想像できますね。山田さんの資料をまとめて、俺のところに持って来い。PCの中もコピーしろって言います。山田さんの業績を全部自分の手柄にするつもりなのです。自分は何ひとつしなかったくせに」
 ま、どこの世界にもこういう人はいる。美味しそうなものは、すぐに自分のものにしたがる。それが部下の持ち物ならなおさらだ。

 通夜が終わり、私と菊池君は会社に戻った。
 夕方の七時過ぎになっていたが、まだ、社員の半分くらいは仕事をしていた。
 珍しく、課長も自分の机に座っていた。
 私たちの顔を見ると、課長が開口一番に言った。
 「通夜はご苦労さま。それでは、山田君の机の整理をして貰おう。資料をまとめて、僕のところに持って来てくれないか。PCのメモリもカードに落としておいてね」
 私は菊池君と顔を見合わせた。
 (想像した通りだわ。課長はわざわざそれを伝えるために、今日は残っていたのだ。

 山田さんの机はこのフロアの隅にある。
 私がその机に向かって歩き出すと、その机には誰かが座っていた。
 「まさか・・・。山田さんが」
 私は亡くなった山田さんがそこに座っているのではないかと考え、震え上がった。
 思わず、セカンドバッグを取り落としたほどだ。
 しかし、よく見ると、その背中は菊池君だった。
 課長が私に指示している間に、さっさと山田さんの机に向かったのだ。
 菊池君は机の上の資料をまとめ終っており、PCにメモリを差し込むところだった。
 菊池君は私に気付くと、小声で囁いた。 
 「データは僕らで有効に使いましょう。課長にはエロビデオでも入れときます」
 それくらいは、許されそうだわね。
 私は菊池君に頷き返した。

 何食わぬ顔で振り向くと、何かを感づいたのか、課長が私たちの方を向いていた。
 私と菊池君はそこで大きな叫び声を上げた。
 「わあ」「きゃあ」
 課長の真後ろに男が立っていた。
 顔色がどす黒い。ひと目でこの世の者ではないことが分かる。

 男は課長の頭に顔を寄せており、これから良からぬことをしようとしているのが明白だった。
 見間違えるわけが無い。
 その顔は紛れも無く、つい先ほど棺桶に横たわっていた、あの山田さんだった。
 ここで覚醒。

 山田さんは奇妙な動きで腕をくねらせ、課長の首を絞めようとする。
 課長は程なく、心不全となりそこで死ぬ。
 そんな筋でした。