日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎扉を叩く音(続)

今朝帰宅しました。

◎扉を叩く音(続)
 「毎年、秋から冬にかけて、深夜、玄関の扉を叩く音がする」話の続編です。
 今年は例年と違い、春になっても終わりません。

5月23日午前3時30分の記録。

 居間の椅子で寝ていた。寝室だと、母の気が籠もっているので、1時間ごとにトイレに起こされてしまう。ちなみに、腎臓が悪いので、普段は日に一二度だけだ。
 女性と食事をする楽しい夢を観ていたのに、この音で起こされた。
 「タンタンタンタン」
 窓ガラスを拳の肉月で叩く音だ。回数は四度きっかり。
 すぐに目覚め、窓に向かって声を掛けた。
 「お袋か?」
 さすがにドキッとした。
 母は今も時々、家と店とを行ったり来たりしているような気がしているからだ。

 体を起こし、気配を確かめる。
「おかしい。本当にお袋なのか」
 自分の家でも、玄関の扉や居間の窓ガラスを叩く音が時々聞こえる。
 大体は、冬の寒い時期で、心臓の調子が悪い時だ。
 音がした時に、すかさず走って行き、カーテンを開ければ、たぶん音の主を見られる。
 しかし、俺にはその勇気はない。「気のせい」や、夢でも幻聴でもない大きさの音なので、まず確実にそこにいる。それが「お迎え」みたいなヤツなら、まずは会ってはいけないということだ。
 前の日に叔母と話をしたばかりだが、「葬儀の後ではどこの家でも異変が起きている」と言っていた。

 「何てこった。今も調子が悪いぞ」
 今は冬じゃないが、調子は悪い。すなわち、冬の寒い時期にそれが起きるのではなく、俺の調子が悪い時に起きているのだ。
 コイツはもしや、俺を目指してきているのかもしれん。

 「ヤバい。つい昨日、母のお迎えの話をしたばかりだが、こっちは俺のかもしれんぞ」
 それから一時間経っても、家のあちこちがガタピシと音を立てていた。

 いつも音がする度に首を捻っていたが、あれがお迎えの一種だと考えると、改めて納得できる。
 この後も絶対に中に招き入れぬように、気を張っている必要がありそうだ。
 まあ、徐々にその日が近付いているのは確か。いくら備えても、憂いはある。