日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第709夜 山奥の村で

◎夢の話 第709夜 山奥の村で
 8日の朝4時に観た夢です。

 夢の中の俺は女で28歳くらい。山奥の村の警察署長だ。
 中央のキャリアなのだが、20台の内に自治体の管理職を経験し、30台では都道府県に出向し県警の本部長になる。俺は自ら希望し、県の刑事部長ではなく、この村の警察署長になることを選んだ。
 父が刑事で、その影響もあり、なるべく現場に近い方が良いと思ったのだ。

 警察署長と言っても、この村の人口は全部で2百数十人だから、署には部下が2人と事務員が1人しかいない。何かあれば、最寄の市警察に連絡し、応援を呼ぶことになっていた。
 だが、もちろん、事件など起きない。
 平穏無事に毎日が過ぎて行く。
 警察署長の椅子に座っているうちに、俺は「私」に変化していた。夢の世界の中の主人公に同化したのだ。

 3月になり、一日ごとに春めいて来た。
 私はここに来てから1年半だが、4月に異動となり、一旦、本局に戻ることになっていた。さすがに、この村は平和過ぎたから、経験を積むことにはならなかった。
 次はどこかの県警だが、配属はまだ知らされていない。
 そんな時に、あの地震が来た。
 内陸直下型の地震で、震度5を超えたから、集落の外に繋がる道が山崩れのために塞がれてしまった。
 周辺の町村でも同じような状況だったから、復旧には時間が掛かる。
 この村は最奥にあったから、おそらく最後で、2週間は掛かるようだ。
 警察署のある集落は、外界と断絶され、二十人が孤立した。
 水はあるが、食料が尽きる。
 だが、衛星電話で入った連絡では、数日中にヘリで救援物資を落としてくれるらしい。

 あとは村人の家を一軒一軒周り、無事を確認するだけだ。
 集落の中の道も崩れているから、各戸を訪問するのも覚束ないのだが、幸い昔のつくりの堅牢な家が多く、自身で潰れた家は無いようだ。
 この日、私は署員一人と同行して、村から一番離れた家に行くことにした。
 山の中にポツンと一軒だけ建つ家で、そこには最近移り住んできた五十台の夫婦が暮している。
 道に岩が落ちていたから、かなりの時間が掛かったが、目指す家まで百辰里箸海蹐泙脳紊って来られた。
 すると、人の気配を感じたのか、家の方から声が聞こえて来た。
 「助けて」
 細々とした女性の声だ。
 「大変だ」「すぐに行きましょう」
 私は署員の若者(23歳)と一緒に、家の方に走り寄った。
 声は家の裏手から聞こえて来る。
 家の裏に行くと、再び声が聞こえた。
 「助けて。私はここです」
 声は頭の上から聞こえていた。
 上を見ると、家の裏にある杉の樹の上にツリーハウスがある。
 おそらく、この家の主人が道楽で作ったものだろう。
 「どうしたんですか?」
 すると、女性が顔を出した。
 「あの獣は?あの獣はもういなくなりましたか」
 獣?獣とはなんだろう。
 私は上に向かって、声を張り上げる。
 「何があったんですか?私はここの警察署長です。下に降りられますかあ」
 すると、するすると縄梯子が下がって来た。
 その梯子を伝って、女性が下に降りて来た。
 女性は50歳位で、ここの家の奥さんだった。

 「昨日、夫が何かの獣に襲われたのです。地震の後、夫が周りを見に行ったのですが、夕方、家に戻った時には血だらけでした。そして、夫は私に『すぐにツリーハウスに上って梯子を上げろ』と言ったのです」
 「何に襲われたのですか」
 「分かりません。夫に言われるまま、私はこの樹の上に上り、夫が来るのを待ちました。でも、その後、バタバタという音が聞こえただけで、夫も獣も消えてしまいました」
 「それで、旦那さんが襲われたと思ったわけですね」
 「夫が戻った時には、体に爪の痕がついていたのです」
 ここで署員が口を開いた。
 「熊でしょうか。ここには時折、熊が降りて来ます」
 「でも、もしそれが熊なら、奥さんだってやられていたかもしれない。熊は樹に上れるもの。まずは調べてみましょう」
 とりあえず、私と署員は両方とも拳銃を持っていた。
 熊相手では心許ないが、しかし、何も無いよりはましだ。

 母屋の方に回ると、玄関の前にべったりと血飛沫の痕が残っている。
 「ああ。やはり夫は・・・」
 奥さんが肩を落とす。
 「まだはっきりしたことは分かりませんよ。状況を確かめましょう」
 その時のことだ。
 家の裏手の方から、恐ろしく獰猛な獣の声が響いた。
 「ぐおおおおう」
 声と言うより、まさしく咆哮だった。
 「あれは・・・。熊じゃない。熊よりも恐ろしい何かだわ」
 その声は虎やライオンが吠えるのに近かった。

 ここで中断。
 周囲から孤立した場所にいる村人たちを「何か」が襲います。
 大半が老人で、その孫が数人。
 若い女性警察署長は、部下1人と共に、「何か」の脅威に直面する。
 話としては、『リオ・ブラボー』系のオーソドックスな西部劇の構成になっています。
 当たり前の話ですが、気晴らしにはなるので、いずれ物語に直してみることにしました。