日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第233夜 鏡

夕食の後、少し居眠りをした時に見た短い夢です。

眼が開くと、大きな建物の窓辺に立ち、外を見ていた。
建物は古い洋館で、5階建て。
中に向き直ると、そこはかなり広い部屋で、ベッドが30台も並んでいた。
壁際には大きな鏡がある。

鏡の前に立つと、私は女性で、15歳くらい。
髪は金髪だ。
ふうん。
名前は確かエレナとかイレインとか言ったはず。

ベッドには同じくらいの年ごろの女の子たちが眠っている。
今は真夜中なんだな。

そう言えば、ここはバレエ学校の寄宿舎だ。
私はどこかヨーロッパの片田舎から、バレエを学ぶためにこの学校に入ったのだった。
(なんだか、ホラー映画みたいな設定だよな。)

カタカタと音がする。
見回りが来たのだ。
私は急いでベッドに戻り、毛布を被る。

部屋の中に入ってきたのは、カウダー先生ともう一人。
毛布越しに、2人の話が聞こえる。
「別に異常はないようね」
「あったら困ります。もう今週に入って2人もいなくなりましたから」
「しっかり鍵を点検しておくのよ」
「はい」
2人は部屋の中をひと回りすると、外に出て行った。

そう言えば・・・。
この学校は練習が厳しくて、成績が少しでも落ちると直ちに放校になる。
練習について行けずに、途中で逃げ出す子も多い。
10月に入学するのは120人だけど、3か月すれば30人は消えるそうだ。
今年は減り方が早くて、たった2か月で40人がいなくなった。
卒業できるのは半数としても、今年は減り方が早すぎる。
それで、先生方が交替で、夜の見回りをしているのだ。
親が訪れて、わが子を連れ帰るのは致し方ないが、夜中に脱走されると無用心だし、夜道には危険も多い。
それでも、ボツボツと女の子が消えて行く。

そのまま毛布を被って横になっていたが、まったく眠れない。
少し眠くなると、廊下の柱時計がボーン、ボーンと音を立てる。
もう一度、ベッドから降り、窓の近くに行く。
窓の桟にもたれて、部屋の中を見回した。

30台のベッドに、女の子が24人。
最後まで残れるのは何人くらいだろう。

左の壁にある大きな鏡は、いつでも自分のフォームを点検できるようにするためだ。
その鏡の前に立ち、ポ-ズを取ってみる。
薄暗いので、よく見えない。
眼を凝らして、自分の姿を見つめる。

すると、鏡の向こうで、何かが動いているような気がした。
普段は思いもしなかったが、こちらが暗いのでたまたま光が漏れたのだ。
「あれ?これってもしかして・・・」
(鏡の向こうに部屋があり、向こう側では刑事たちがこちらを眺めていたりして。)

「そんなことはないわよね」
(この辺から、思考そのものが女言葉に変わり始める。)
何気なく、鏡の端に手を掛けると、「きゅっ」と音がして、鏡全体がこちらがわに開いた。
ぎぎー。
鏡の裏側は、真っ暗な穴だった。
(うわー。まるっきりホラー映画じゃん。)

なるほど。
(さっき見えたのは、裏側で人が動いたせいなのだわ。)
納得している場合ではない。
建物じゅうに鍵を掛けているのに、女の子がいなくなるのは、要するに「建物の中で消えている」からだ。
怪物みたいなヤツが巣食っていて、女の子をさらって食っている、とか。
変態の校長が、可愛い子を選んで餌食にしている、とか。
そんなことがきっと起きてる。

こりゃ、早く逃げないと。
「皆。早く起きて!」
大声を出しながら、ドアに駆け寄る。
「何?」「なに?」
鏡の向こうに悪いヤツがいる。そう説明する暇はない。
こういう時の一番の掛け声は決まっている。
「火事よ。早く逃げて!」

わあっと女の子たちが起き上がり、出口に殺到した。
私はこぶしでドアを叩く。
「先生!開けて。早く開けてください」

後ろの方で「ぎぎーっ」と大きな音がした。
鏡の後ろから、そいつが出て来る音だ。
早くしないと掴まってしまう。
「開けて!火事だ~」

この叫びの後、建物じゅうにパッと灯りが点いた。
ここで覚醒。

これは夢判断では謎を解けそうにありません。
まあ、夢の多くは心象風景を整理するものなので、辞書を引くようにあてはめられるものはわずかです。
自分自身の過去のどういった経験が反映されているのかを見極める必要がありそうです。

ちなみに、カウダー先生の名前はバーニャ。「バーニャ・カウダー先生」なんて、夢でなければ使いません(苦笑)。