日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第294夜 高校編入

いつもは2、3時間で目覚めるのに、珍しく長い時間眠れました。
疲れが取れたのか、ごく普通の夢を観ました。

我に返ると、どこか学校らしき建物の中にいる。
教室の机の1つにオレは腰かけていた。
回りには、十数人が座っているが、皆十代の若者だ。

すぐに今の状況を思い出した。
オレは私立高校に途中編入させてもらおうとしているのだ。
もはや良いオヤジの齢だが、人生の最後に、これまでの人生でやり残したことを済ませようと思った。
それが芸術大学への進学だった。
自己流を捨てて、一から基礎をやり直そうと思い、芸術大学に行くことにしたのだが、入試を受ける必要がある。
そこで、少し入試のための勉強をしようと、受験の1年前から私立高校で勉強しようと思い立ったのだった。
妙に勘ぐられないように、もちろん、ここは男子校だ。

オレは大学の教員だったので、試験は大丈夫だとは思うが、教育の体制がだいぶ変わっているので、今の環境に慣れる必要がある。
何せ、学費免除を勝ち取るためには、かなりの成績を収めねばならない。

だが、高校の中に入ると、オレはもはや校長と同じくらいの年齢だ。
皆が校長と勘違いして挨拶する。
事情を知っている筈の校長ですら、オレとすれ違う時には会釈をした(笑)。
ま、元が大学の教員なので、物腰は落ち着いているとは思う。

廊下に出ると、オレと同じくらいの年恰好の女性が話し掛けてきた。
「先生。ご相談したいことがあるのですが」
やはりオレをここの教員と勘違いしているらしい。
「すいませんが、私はここの教員ではありませんよ。生徒になるところです」
女性が笑う。
「またまた。冗談はやめてください。校長先生」
「校長じゃありません」
「確か先生は凸凹大学のご出身でしたね。今日は息子ではなく、その姉の進学について相談に乗って欲しいのです」
たまたまだが、オレは凸凹大学の出身で、しかもそこの教員を務めていた。
「凸凹大学ですか。あそこは止めといたほうが良いですよ。いい先生は辞めちゃったし、文科省のお達しで公務員みたいな講義をさせられてます。つまらないですよ」
オレの話の中の「良い先生」とは、すなわちオレのことだ(笑)。
これくらいの冗談は言わせてくれ。

「えー。そうなんですかあ」
女性が大仰にのけぞる。
そのままオレたちは玄関に向かって歩き出した。

「娘は浪人することになっても凸凹に入りたいと言っているんです」
「今はそれこそ専門的な分野でとことん研究を突き詰めるか、AO入学でさらっとやり過ごすかの2つに1つですよ。凸凹は入試が難しい割に、そこを出た後でも就職に有利に働くわけじゃない。引っ張り上げてくれる先輩が少ないのです」
「でも、それは入った者だけが言えることですよ」
「どうしても入りたいんだったら、何か特技を身に付けることです。運動でも、芸術でもOK。日本一まで行かずとも、その県で1位になればとりあえず入れてはくれます」
この路線を狙って、競技人口のやたら少ないマイナーな競技で選手登録し、「県で1位」という肩書を貰うヤツがいる。
もちろん、国体に行けば、初戦で大差負けをするわけだが、それでも県で1位であることに変わりは無い。
セパタクロー辺りになると、アジア大会までは行けますよ。もっとも、それなりに競技人口がいますので、県から先に進むのは大変ですけど。あくまで例え話です」
「うちの娘はバレエを習っていました」
「それって、日本有数のレベルに達するには、凸凹大学に入るよりはるかに難しいのでは」
一芸の道は厳しいからなあ。
オレが仕事を辞めて、芸術の修行をしようと思い立ったのも、それが困難であることを知っているからだ。

「ま、凸凹大学の採用基準には裏がありますから、それとなくそれを訊くことですね」
その辺、オレはその当の担当者だったから、からくりは知っている。
「先生。先生はお詳しいんですね」
イケネ。ちょっと調子に乗ったかも。

すると、後ろから唐突に声を掛けられた。
「すいませんが」
振り返ると、ここの校長と教頭が立っていた。
「聞くつもりはありませんでしたが、今の話を聞きました。辺鉾(へっぽこ)さん。あなたの編入はもちろん合格です。授業料も無しで良いです。その代り凸凹大学の入試対策担当になってくれませんか」
オレはすかさず答えた。
「そんなの真っ平ごめんだあ!オレはそういうのが嫌で人生をやり直そうとしてるんだよ!」

ここで覚醒。