◎排気ダクトに小鳥がいる
昨夜、家人が「換気扇のダクトの中に小鳥がいるみたいだ」と言いました。
「まさか。この時期にダクトに入ったりするのか?」
子どもの頃、煙突付きの灯油ストーブを使っている時に、春に煙突の先を塞ぐのを忘れた年があるのですが、夏の間、そこに小鳥が巣を作ったことがあります。
冬が近くなり、ストーブに火を入れると、部屋の中に煙が充満しました。
鳥の巣が穴を塞いでいたので、煙が出られなくなったのです。
排気ダクトに巣を作られでもしたら、後が面倒です。
とりあえず、換気扇を回して、小鳥を追い出すことにしました。
しかし、夜中になり、ガス台を使うと、家人の言う通り、「チチチ」という小鳥の声がします。
「おいおい。本当にいたのかよ」
冬の寒い夜に、ようやく探し当てた暖かい場所を取り上げることになっては、少し可哀想な気もします。
しかし、冷静になって考えると、小鳥が冬に巣を作ることはありません。
繁殖期の前ですねえ。春以降の話。
「でも、こないだ夜中に風が強いことがあったから、その時に逃げ込んで来たんじゃないかしら」
うーん。
台風の時に、カラスが強風から逃れるために当家の2階のベランダに来たことがあります。3羽並んで手摺にしがみついていました。
排気ダクトの上には家人の部屋があります。
家人は小鳥がひと晩中、「チチチ」と鳴くので、よく眠れなかったとのこと。
朝になっても、レンジの近くに行くと「チチ」という声がしました。
でも、さすがに頭が回るようになっています。
「おかしいな。小鳥がいたのにせよ、夜中じゅうさえずるなんてことがあるのか」
ここでハッと気付きます。
「おい。これは祖父ちゃんがいつも言うことと変わりない。祖父ちゃんは、部屋の照明のところに小鳥がいると言っていた。祖父ちゃんは大丈夫なのか」
父が何かを報せようとしているわけではないでしょうね。
少し不安になります。
「オトーサン。ちょっと外を見て来てよ」
「いや、外回りはお前の担当なんだから、お前が行け」
当家では厨房はダンナで、庭の手入れは、基本、家人がやる決まりです。
「それに、俺は鳥が苦手なんだよ。知ってるだろ」
蛇などはまったく平気ですが、鳥類の感情の無い丸い眼が苦手なのです。
何を考えているのかが分からない。
結局、家人が見に行くことになりました。
家人は外から戻って来ると、一番に「分かったよ!」と言いました。
「あれはバラの木だよ。バラの枝が発泡スチロールの箱に擦れて、音を立ててた」
当家の周囲には、野良猫避けのためにバラを植えてあります。
バラの木があると、そのトゲを嫌い、猫が入り込んで来ないのです。
そのバラが通路を埋めるほど生い茂り、トゲが隣家の庭の隅に置いてあった発泡スチロールの箱に触れ、「チチチ」と音を立てていたわけです。
これで一件落着。
小鳥の生死に関わる事態ではなく、ほっとしました。