日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎女は「化ける」生き物でござんす

◎女は化ける生き物
 当家は自宅前の他に、50メートル離れた場所に駐車場を借りています。いずれ息子が車を動かすようになった時のことを想定しているのですが、普段はそっちの方を使います。
 家の前は家人の鉢植えだらけです、

 お寺に行くべく、車に行こうとすると、前の空き地に人が立っていました。
 女性ですね。年齢は70歳くらい。
 まだ30メートル手前なのに、じっとこっちの方を見据えていました。
 「おいおい。まさか・・・」
 本物の人間なのか?それとも・・・。
 現実には、SNSに書く怪異譚の何倍かの出来事が起きています。文字に落とすのは、その何割かだけ。
 しかし、五歩十歩と近付いたのに、その女はそのまま立って、当方を見ていました。

 「一応は生身の人間なんだな」
 急いでカメラの仕度をしていたのですが、またキャップを閉じます。
 女性の前まで来ると、相手の方から挨拶をして来ました。
 「こんにちは」
 ありゃりゃ。面識のある人なのか。
 でも、全然、思い出せません。
 女性は身長が160センチちょっとくらい。痩せ型で、品の良い「お洋服」を身に着けていました。
 女性が言葉を続けます。
 「良いカメラですね。よく外で撮られるのですか」
 「ええ。よく幽霊を撮るんです」
 とはもちろん、言いませんよ。返事は「たまに景色を撮ります」です。会話に「あの世」の話を持ち出すことはありません。

 知らない人ですが、ここは返さないと。
 「今日はお出掛けですか」
 「ええ。お食事会があるんです」
 それも、たぶん、公式のヤツだな。少なくとも、同窓会とかより上のヤツであることは分かります。
 「今日は寒いですから、体を冷やさないようにして下さいね」
 そう言って、背中を向けた瞬間、その女性が誰かを思い出しました。
 当家の駐車場の地主で、裏の農家の奥さんです。
 普段は、野良着にほっかむり姿しか見たことがありませんので、同一人物には見えなかったのです。
 まったく、まるで別人だよ。こりゃ。

 「こりゃ、女性は怖ろしいな。70歳でも『女』に化けられる」
 ちょっと、「一緒にお食事に行っても良いかな」と思うくらい化けています。
 「やはり女は怖ろしい」
 これが結論、ではもちろんなくて、「やはり何事も心構えから」ということです。
 やはり、きちっとしたところがないとね。

 ここからは独り言。
 「差し詰め、俺はその逆パターンで、普段はがさつでダラダラだが、極めるところでは、きちっと極めて見せる。そういう方向で行かないとな」
 ま、現状は「普段はダラダラだが、ここぞという時もやっぱりダラダラ」です。
 はっと気付いて頭を抱えたのは、話の流れです。
 「カメラ」→「お出掛け」の時点で、「今日はお出掛けですか。では、一枚写真を撮っときましょう」でパチリですねえ。
 この辺の気の回し方が足りない部分が、当方がいつまでも、何をやっても三流のままでいる理由だろうと痛感します。

 家に帰り、このことを家人に報告しました。
 「今日、俺はしくじった。車の近くで、地主の奥さんに会ったのに、写真を撮ってあげなかった。ハレの席に行こうとしてるんだから、撮れよな」
 すると、家人は言下に答えます。
 「そんなの。ストーカーみたいだよ」
 世の中の「ストーカー」は、そいつがたとえエロオヤジでも、相手は「40R」だとは思うけどね。
 家人の反応がオチです。