◎夢の話 第716夜 壁
9日の午前1時に観た夢です。
我に返ると、俺はどこか知らぬ部屋の中で横になっていた。
部屋の中は薄暗い、と言うより、ほとんど真っ暗だ。
中がどうなっているのかまるで分からない。
起き上がって、恐る恐る手を伸ばしてみる。
2メートルほど先に進んだところで、壁に行き当たった。
コンクリートのような、あるいは漆喰のような冷たい壁だった。
「ここは何処なんだろ。地下室か、それとも」
手探りで横に進んでみるが、明かりのスイッチらしきものは何もない。
地下室と思ったのは、空気が澱んでいるせいだ。
何となく暑苦しくて、息が苦しい。
外の冷たい空気が恋しくなる。
「何とかここから出たいものだが」
探っているうちに、スースーと空気が出ている箇所に手が届いた。手の平につめたい空気が当たる。
「この壁に穴が開いているのだな」
よかった。これで良い空気が吸える。
穴に顔を近づけ、新鮮な空気を吸い込んだ。
すると、すぐ隣から声が響いた。
「穴が開いていることに、なかなか気付かないものなんだよ」
俺はその声に聞き覚えがあった。
いつも俺に色んなことを教えてくれる男だ。
年恰好は五十二、三。白髪交じりの短髪で、小ざっぱりした和洋装を身に着けている。
「確かに、周りが見えませんから、手探りで探し当てるしかありませんね」
「あると分かれば、息苦しさが消えるだろ」
「ええ。確かにそうです」
ここで急に男の声が近付いた。ほとんど体が触れそうなほど近くだ。
「皆、この壁に穴が開いていることに気付かないが、さらに秘密がある」
「秘密。秘密とは何ですか」
男が俺の方に顔を向ける気配がある。
「君はこれが部屋の壁だと思っているだろ。四方が全部こんな壁に覆われているとね。でもそれは違う。これは衝立なんだよ。要するに、向こう側と隔てられているのではなく、繋がっている」
「なるほど。じゃあ、横を回って、行き来することが出来るわけだ」
手を打ったところで覚醒。