日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第175夜 郷里の家にて

先ほど、仮眠中に見た夢です。
 
昔住んでいた家にいます。
この家は20歳台まで住んでいた両親の家です。今もありますが、長らく倉庫として使われています。
妻と娘二人が一緒に来ているはずですが、所要で出掛けており、この家にはいません。
 
応接間に入ると、洗濯物が干してありました。
今日は風が強く、外に干せないので、家中に洗濯物が吊るしてあります。
緞帳のような重いカーテンを引きあけると、外はもはや夕暮れです。
「あ。もう夜なんだ」
外は畑と駐車場です。昔の実家は個人商店で、十数台停められる駐車場がありました。
 
後ろを振り向くと、次女が立っていました。
「お。なんだ。いたのか。お前も母さんたちと一緒に出掛けたと思っていた」
「さっきから、ここにいたよ。父さん」
「そうかあ」
次女は長椅子に座っていたのに、気が付きませんでした。
 
ここで玄関のドアがばたんと音をたてました。
誰かが入ってきたのです。
玄関は応接間のすぐ近くです。
 
顔を出すと、そこから入ってきたのは父母でした。
父母の後ろから、叔母が続きます。
「結婚式の打ち合わせに行っていたんだよ」
結婚式。いったい誰が結婚するんだろ。
「○○叔母さんたちも一緒だった」
○○叔母は母の妹ですが、母は自分の妹のことを、息子目線で「叔母さん」と呼びました。
「こんばんは」と頭を下げます。
「おじゃましますね」
叔母の後ろからは、その連れ合いである叔父が入ってきました。
 
ああ、これって夢だ。
叔父は十年も前に亡くなっているもの。
時々、夢の中で夢を自覚することがありますが、今がその時です。
 
父母と叔母夫婦は応札間に入りました。
入れ替わりに、私と次女が廊下に出ます。
「○○。お茶でもいれてくれないか」
「ええ?私はこの家のどこに何があるか、全然知らないよ」
それもそうです。ここには次女が3歳くらいの時に、一度来ただけです。
 
じゃあ、私がやろう。
叔父、すなわち叔母の旦那さんは、コーヒー党だったな。
戸棚を見たのですが、父母はコーヒーを飲まないので、インスタントすら見当たりません。
「じゃあ、店から持って来よう」
個人商店だけに、居住部分が店舗と繋がっているのです。
応接間の反対側が事務室に繋がるドアで、この事務室を通り抜けると、店舗に入れます。
私は事務室を抜け、店のドアを開けました。
 
ドアを開けると、中は倉庫でした。
薄暗い部屋の中には、缶ジュースの箱が山積みになってます。
「ありゃ。もう移転した後だ」
父は4キロ離れた場所に店を新しく建てたのでした。
 
中を見回すと、ダンボールの箱の山の間に、コンクリートの床が少し見えています。
その一角に、空き箱を折り畳んで床に敷き、上で横になっている人がいました。
「おお。びっくりした」
寝転がっていたのは、父の末弟、すなわち叔父(先ほどの叔父とは別人)でした。
私の親族はこの叔父のことを「床屋の叔父ちゃん」と呼んでいます。
叔母が理容店を営んでいたからです。
 
「叔父ちゃん。ここで寝てたの?」
「ああ」
「ここ。寒くないですか」
まだ梅の花も咲かぬ季節です。
「別に大丈夫だよ」
「でも、腰を冷やすと、あちこちおかしくなってしまいますよ。オレなんか、床でばかり寝ていたら、体中病気だらけになってしまってます」
「オレはいいんだよ。気になんないから」
 
この叔父は今まで、いったいどこに行っていたんだろ。
死んでから、もう何年くらい経つのかな。
この叔父は、心臓の手術を受けて無事成功したのに、退院してすぐに桃畑に行き、そこで亡くなったのでした。
しばらく前に床屋の叔母と会い、「ここ何年か、叔父ちゃんはどこへ行ってるんですか?」と軽口を言ったばかりです。
叔父はずっとここに寝転んでいたのですね。
 
「叔父ちゃん。とりあえず、中に入りましょうよ。ここは寒すぎるから。オヤジたちも中にいます」
叔父はようやく体を起こしました。
「おおそうか。じゃあ、起きるかな」
腰を上げようとする叔父に、私は左手を差し出しました。
叔父はその手に掴まり、「よいしょっ」と立ち上がりました。
 
ここで覚醒。
夢に登場した人物の中に、故人が二人いました。
結婚するのは、最初の叔母夫婦の娘だったように感じます。
その従妹ももはや故人です。
目覚めてすぐに、「久しくお墓参りに行っていないので、この春には行かなくては」と思いました。
そう言えば、来週はもう彼岸です。