日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第267夜 クローン

夕食後、今のテレビの前で居眠りをした時に観ていた夢です。

目が醒めると、私はテーブルに座っている。
首元がくすぐったいので、それを手で払うと、自分の髪の毛だ。
あれれ。髪が肩くらいまであるぞ。
胸に手を当ててみると、柔らかい乳房があった。

なんと、私は女でした。
(女である自分を意識した瞬間に、頭の中が女言葉になります。)
立ち上がって、鏡の前に立つ。
私はまだ25、26歳でした。
ほっそりしていますが、高校時代は陸上部でしたね。
エストがきっちり細く、きれいなラインです。
そんなことが頭の中に浮かびます。

ノックの音が聞こえました。
「はあい」
チェーンを掛けたまま、ドアを少し開きます。
ドアの外には、男が2人。
「警察の者です。〇〇◆◆さんですね。少し話を聞かせてもらえますか」
もちろん、その言葉だけで信用するわけがありません。
「警察手帳を見せて貰えますか?」
刑事が手帳を出します。
手帳の中身なんて知るわけがありませんが、それには本署の電話番号が書いてあります。
「ちょっと待ってくださいね」
携帯電話で104を回し、警察署の番号を教えて貰う。
合っていた。

ドアを開けて、外に出る。
外に出るのは、何かあった時に、叫ぶことが出来るからです。
警察官が犯罪を起こすことだって、何度もありましたからね。

外に出ると、刑事は突然、私の腕を掴みました。
「15時34分。被疑者を確保しました」
え?話を聞くはずじゃなかったの?
「ちょっとちょっと。なんで私が逮捕されるんですか?」
「殺人を犯したからだよ」
冗談じゃない。
「私は殺人なんか犯していません。何かの間違いです!」

2人のうち年かさの刑事の方が説明を始める。
「昨日、君は人を殺したんだよ。あ、正確には君じゃないけどね」
「いったいどういうことですか?」
「3か月前に、通称でワン・フォー・オール法ってやつが制定されたでしょ。あなたはその最初の被疑者になったのです」
「私は先月、留学先から戻ったばかりです。いったい何ですか。そのワン・フォー・・・」
「オール法。1人はみんなのために。みんなは1人のためにっていう法律だよ」
「それで、なんで私が逮捕されなくちゃいけないんですか?」

年かさの刑事が、あきれたような表情に変わる。
「だから、人を殺したんだって。あなたがね。いや、正確にはあなたと同一の遺伝子を持つ人が殺したんだけどね」
ここで若い方が口を挟む。
「優良保護法って、聞いたことがあるでしょ。28年前に出来た制度だけど、国の財政を潤すために、自主的に2億円納税すると、自分の100%クローン人間を1人作ってもらえる。あなたは、いやあなたと同じ遺伝子を持つ元の人が、最初の適用者だったけど、その人が20億円を払って10人のクローン人間を作った。あなたはそのうちの1人なんですよ」
年かさの刑事が後を続ける。
「成功して金持ちになっても、親に似た子どもが出来るとは限らない。愚かな子を持ち、財産を無駄に食いつぶされるくらいなら、自分のクローンを作ろうという風潮が瞬く間に広がったのさ。ところが、成功した者が、必ずしも善良な者だったとは限らない。外面は良くても、内面は悪者だということもよくある。時にはシリアルキラーだったりもするわけだ」
 そして3年前に、1人のクローンが連続殺人を始めたら、瞬く間にクローン仲間、いや遺伝的に同一人物のコピーたちが同じことを始めたのだ。
 それは、私が留学に旅立った、その月に起きたことでした。

「今度の法律では、それと同じことが起きないように、遺伝子単位で取り締まろうという内容なんだよ。だから、あなたと同じ遺伝子を持つ者が殺人を犯したら、あなたも逮捕されることになる」
「私と同じ遺伝子を持つ人が・・・」
「そう。同じ人のクローン人間は、総て同じ罪で裁かれることになる。だって本来、同一人物なんだからね」

なんだか、全然納得できないわ。
「それで、私のクローンは何をしたんですか?」
「正確には、あなたもクローンなんだから、同じ遺伝子を持つ人、という表現のほうが正しいかな。その男はこの半年のうちに16人の人を殺したんだよ」
「ちょっと待ってください。私は女です。100%のクローンなら、性別が変わることなんてないでしょうに。そうすると、やはり何かの間違いですよ」
刑事たちは2人揃って苦笑いを漏らした。
「そこがそれ、あなたを作った元の男は遺伝子操作の第一人者だったからね。複製を作る前に遺伝子を調整して、1人だけ女性に変えてあった。もしものことを考えて、自分の遺伝子を隠して置こうとしたんだな」
「じゃあ、私は100%クローンじゃないでしょう。やはり逮捕は不当です」
「96%だったみたいだね。5%までは誤差の範囲だから、やはりあなたも犯人ということです」

私の腕にガチャッと手錠がかけられる。
「それで、私はこれからどうなるんですか?」
この時、初めて、刑事2人が「すまなそうな顔」を見せた。
「あなたは、いや、あなたと遺伝子的に同一人物の犯人は、既に死刑になっている。昨夜殺人を犯した人が9人目で、やっぱり同じことをやってます。だから、残念ながらあなたも・・・」
何もしていないのに、死刑になるってこと?

そこから先は耳鳴りがして、刑事の話の内容は、私には良く聞こえなかった。
耳鳴りの向こうでは、なぜか波の音が響いているような気がした。

ここで覚醒。

流行作家が書く通俗小説か、昨今流行の映画みたいな筋ですね。
ちょっと、話としては使えません。
でも、なんでこんな夢を観たのでしょうか。