日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第410夜 二人組の悪霊

水曜の午前1時頃に観た短い夢です。

かなり大きな家に、妻子と共に住んでいる。
ヨーロッパ風の家で、隣の棟とくっついたつくりだ。
すなわち、大きなひとつの家が2つに分かれており、2つの家族が別々に暮らしている。

間を仕切るのは分厚い壁なので、隣の音は聞こえない。
だから、お互いに相手のことを気にせずに暮らしていける。
もちろん、普通の人間なら、ということだが。

残念なことに、オレは普通の人間ではなく、第六感がやたら強い。「霊感がある」とも言うが、オレの場合はいわゆる「霊能力者」とは違って本物なので、そのことを隠して暮らしている。
本物はごく身近な人にしかそのことを打ち明けない。
自分を「霊能力者」と呼ぶ者は、単に想像や空想を語っているだけだが、オレの場合は相手(悪霊)が現実に目の前にいるので、そいつに干渉されないようにするだけで手いっぱいだ。
他人の悩み事などを聞いていられる余裕はない。
自分だけの分で沢山だ。だから、関わりを持たずに済むように口をつぐんでいるのだ。

そんなオレにとっては、この家の壁など無いようなものだ。
透明なガラスと同じで、向こう側で起こっていることが、すっかり見えてしまう。
隣の家には老夫婦が住んでいるが、穏やかでつつましい暮らしをしていた。

ある夜のことだ。
オレは居間に座って、映画を観ていた。
壁の向こう側は隣の夫婦の寝室で、既に二人は眠っている。
すると、その部屋に30台くらいの男女が入って来る気配がある。
「おや。おかしいな。隣の夫婦に子どもはいない」
思わず、精神を集中してしまう。

すると、すぐに壁が透き通って、隣の部屋の様子が見えた。
侵入した男女は、じっとベッドの上の老夫婦のことを眺めている。
「いかん。こいつらは悪人だ。夫婦のことを殺そうとしている」
オレの直感がそう叫ぶ。

すぐに男が夫の首を締め始めた。
老人でも男の方が力があるので、最初に夫の方を殺す、というわけだ。
老人が苦しそうにうめく。
ベッドの脇では、侵入者の女がじっとそれを見下ろしている。
「ははあ。コイツの方が主人なのだな」

オレは思わず叫んだ。
「やめろ。何をするんだ!この人殺し」
石造りの透明な壁をこぶしで叩く。
「お前たちは見られてるんだぞ」

すると、オレのそんな気配に気づいたのか、女の方が顔を上げた。
オレの叫び声が届いたのかもしれぬが、50センチはある壁だから音ではなく気配だろう。
女は仕切の壁をじっと見つめた。
こちら側の様子を測るような視線で壁に探りを入れている。
すると、その数秒後に、女の視線はオレの目とぶつかった。
女がハッとする。

「コイツ。オレのことが分かるのだな」
だとすると、コイツもオレと同じ人種か、あるいはもっと先に進んだ別の者かだ。
女の眼には悪意が満ちている。

オレはすかさず、女の顔をめがけ九字を切った。
女の顔が憎しみに溢れる。
「ははあ。コイツめ。人間じゃないな」
オレと「同じ類の人間」ではなく、「悪霊」の方だった。

重ねて九字を切る。
すると、三度目にオレの手の動きに呼応して、女の顔に赤い傷が走った。
「おお。効き目が出て来たか」
この死霊祓いの呪いを何万回と唱えているが、ようやく力が付いて来たようだ。
呪い自体に効力があるのではなく、それを唱える者の霊力に力があるかどうかが問題なのだからな。

野球に例えれば、普段練習をしていない者が、いきなりバッターボックスに立ったところで、全然打てないのと同じだ。
日々の積み重ねがあって、初めて打ち返すことが出来るのだ。
同じことはお札にも言える。
神社やお寺から護符を貰い、ただそれを貼ったところで効き目は薄い。
貼る者やそこで暮らす者が、日頃から強く念じなければダメなのだ。

「怨霊退散。お前らのいいようにさせてたまるか。地獄へ送ってやる」
再び九字を切ると、女の顔がぱっくりと割れた。

ここで覚醒。

実際には、家全体が「私」を示しており、男女2人組の悪霊が私の中に入って来ようとしている状況だ。
何十年も経験を積んで来たので、ようやく打ち祓うことが出来るようになっている。
そんな夢でした。
命を持たない者の視線は薄気味悪いので、目覚めてしばらくの間は不快でした。
「そう言えば、前の人生でも、その前の人生でも、自分は修験者だったよな」
今生では、何十年間も遠回りをしたような気がします。
倒せるようになって来たのなら、倒せるだけ倒しておくべきだ、とも。

ここまでが、起床後、十数分の間、頭にあったことです。
起きても、しばらくの間はまだ夢のうちでした。