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◎「密鋳当百改造母銭」 謎解きのゲーム その1
かなり前のことだが、岩手県内で当百銭を八百枚程度入手したことがある。
すべて藁通しで、少なくとも戦前に括られたものである。 その中に、1枚だけ表面がつるんとしたこの品があった。
表面が一様に研磨された品は、雑銭中にてたまに見かけるが、こうなった理由は幾つかある。
1)パチンコ玉の玉磨き機に混入した。
十円や百円貨で、妙に「全体が磨滅した」ものが出るが、これはこのルート。
貨幣が玉磨き機に混入すると、金属球で磨かれる効果を生む。たまにネットオークションに「エラー貨」として出ていたりするが、この場合のエラーは「うっかり落としてしまった」という意味になり製造過程で生じたものではない。
2)ローラーに入った。
セメントをこねるローラ-の中に砂を入れ、鉄銭を入れて回すと、表面の錆が取れて見やすくなる。肌理の細かい砂を使うと傷もつかないので、ベテラン収集家が多用する手法だが、これに混じったもの。前者と違うのは、意図的であること。
3)母銭として使用した。
鋳銭では母銭を砂范の間に入れて、上から強い圧力を掛けるが、これを千回も行えば、次第に母銭が磨滅する。鋳銭工程でこうなった。
こうなった理由は主に、以上の三つであるが、当品は一体どれか。
答は割合と簡単に見つかる。
中央に穿が開いているわけだが、この周囲を見ればよい。
1)2)とも、上下左右ランダムに玉や砂が当たるため、角が丸くなっている。
穿内または穿の角が立っていれば、上下にしか圧力がかかっていないということになり、概ね3)になる。
画像の通り、郭の内側に角が残っているので、3)である可能性が高い。
では誰がどのように作ったのか。
貨幣の密造は昔も今も犯罪であるから、製作者に関する情報がほとんど残らない。
事実上、それを知ることは不可能なのだが、あえて類推してゆく。
(1)銭種
まずはこの品の銭容を確かめる。
元の台は「江戸本座長郭」のようである。「ようである」というのは、銭文に変化がみられるからだが、まず字の末端が潰れているのは、圧力によって生じたものだろう。
ただ、「寶」字の足の踏ん張りが強いところを見ると、本座長郭そのままの姿とは言えない。輪測の極印は摩耗して不鮮明だが、通常の霧極印とは異なる印象である。
地金の黄色味が本座より若干強いきらいがあるので、直接の母型は密鋳銭(仿鋳銭)であろう。
母銭を目的として作成したものではなく、密鋳銭の穿内に刀を入れ、改造して母銭とした品のようだが、正確な状況は分からない。 (続く)