◎古貨幣迷宮事件簿 六月期出品物 (続き)
吉田の牛曳は出自が古く、数百年前から作られている絵銭だ。
江戸時代の古銭書にも多く掲載されている。
詳細を知りたい人はググるとすぐに出るので、そちらをどうぞ。
割とポピュラーな絵銭なので、各地で写しも作られているし、明治大正期にも作られた。
研究対象としては面白そうな品だが、これを専門に収集研究している人については、あまり耳にしたことがない。
以下は雑感である。
比較的、時代を測れるのは「南部方面のもの」で、地金・製作や仕上げ手法などから、この地方の作と推定出来る。そうなると、盛んに作られたのは、幕末明治、明治中期が中心となる。それ以降ももちろんあるようだ。
子供の頃、実家に木箱一つ分の古銭があったのだが、その中には絵銭や面子銭が割と沢山混じっていた。面子銭の多くは面背とも無紋でのっぺりした品だったが、時代色があり楽しかった。その中に、吉田の牛曳の厚肉銭も混じっていたと思う。
地元でも、「製造工程上の違い」を研究している人は少ない。
この中で言えば、見前絵銭が他と何が違うのかについては、調べれていれば簡単な話なのだが、殆どの人が知らない。
やや脱線した。
江戸の絵銭譜を引き比べ、ある程度、製作年代を推定出来れば、さぞ楽しかろうと思う。意匠で分けて行くと、何百種類に及ぶのではないか。
ところで、大型吉田は浄法寺鋳の、しかも山内座のものを所有していたが、ある古銭会で回覧しているうちにホルダーから抜け落ちていた。会主の顔を潰せないので、その時は黙っていたが、現存数品の品をかっぱらって、どうするつもりなのだろう。
古銭は小さいものなので、つい欲しくなり握り込んでしまう人が割合多いようだ。