日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎古貨幣迷宮事件簿 「二月期の品評 F17-24」

◎古貨幣迷宮事件簿 「二月期の品評 F17-24」

 日程が押していることと、今回、割と入手しやすいように、低価格帯の単品を出しているので、サクサクと売り切り処理を進める。

 在庫照会の時に「不受理」とされるのは、同価以上の札が先に入っているということだ。先に申し込んだ札を上回ると「受理」となる。途中経過を開示しないので、同価先着にはせず、応札が止まり1、2日後に決定とする。これは対面の集まりでの盆回しとほぼ同等の扱いということだ。

F17 群れ馬大黒

 K村さんの遺愛品で、明治末から大正期の仙台領の絵銭と見られる。

 明治三十年代末から大正三年にかけては、急激に景気が良くなった。

 かつての昭和末から平成初頭の「バブル景気」と似た状況だったとイメージすると分かりよいと思う。

 この時に、縁起物として各種絵銭が作られ、香具師らの手により盛んに売られたようだ。江戸や大阪など都市部だけでなく、地方でも同じ状況で、地方在住の方より、大正絵銭のバラエティを見せて貰ったことがある。

 古銭収集家は、明治末から大正くらいの品を軽視するが、絵銭については、研究の余地が多々あると思う。そもそも現在、市中で見掛ける絵銭類の多くが明治に入ってからの品でもあり、大正絵銭を排除する理由が見当たらない。

 軽視される分、都市部には出て来ないので、今も地方には、その土地ならではの絵銭が多数眠っている筈だ。

 この品は、意匠が突飛だが、木型を刻んで作った地方絵銭のよう。

 K村さんのコレクションだから、江刺地方の産だろうと見られる。

 今にして、K村さんに師事すれば良かった、と後悔する。

 K村さんが「かなりの偏屈」であることは、知る人ぞ知る。つい敬遠したくなるわけだが、「江刺銭」のジャンルを確立した当事者で、かつ江刺絵銭を体系的に理解していた唯一の人だった。後を継ぐ者がいなかったので、江刺絵銭については、恐らく歴史の闇の中に消え去ると思う。

 この数年で、江刺絵銭の入り口には到達したのだが、体がもたなくなり、放棄せざるを得ない。体系化した最初の一人になるチャンスがあったので、幾らか残念ではある。

 なお、高校の先輩後輩と言うことで、「偏屈さ」だけは、k村さんに引けを取らないと思う。これからも、誰もが敬遠したくなる道を進もうと思う。

 

F18 仙台鯛釣り恵比寿

 仙台は七福神信仰の東日本最大の拠点だった。江戸よりも大きい。

 このため、絵銭のジャンルでも、七福神銭や恵比寿銭に、仙台発祥の意匠が様々あるようだ。鯛釣恵比寿のバリエーションも複数あり、製作が石巻銭の母銭に似たつくりの品もあるから、地金づくりの技を共有しているのかもしれぬ。

 この品は見栄えが黒いので、南部の写しなのかと思っていたが、手ずれているのは、写したからではなく「古い」ということのようだ。輪側が縦鑢で、安政より前に作られた。

 

F19 瓢箪駒二種 

 左が寛永駒で「瓢箪のやたら大きな駒引き」銭だ。たぶん、これまでに見つかっている唯一の品だろうと思う。「古いものであってくれ」と願うところだが、地金の印象が明治末から大正期のイメージだ。輪側を確かめると、やはりグラインダで処理しているので、明治三十年以降の作だ。それでも、この品しかない上に、北奥固有の絵銭だろうから、そういう面からの評価になる。

 右側は状態が少し劣るのだが、「古い」という意味だった。こういう感じの絵銭は、地金が黄色くても概ね昔の作だ。

 

F20 寛永駒 三種

 寛永駒は概ね明治の作だが、維新後、割と早くから作られている。「明治新選泉譜」には各種の掲載があったように記憶している(手元になく不確か)。

 中央は大正くらいだろうが、左右は明治前半くらいまでは遡れると思う。

 左の品は厚肉で、面子銭として作成したのかもしれぬ。

 

F21、F22 古南鐐など 

 売り切りサービス品で、抽選会の権利を得るのに手頃な設定にした。

 古金銀にはそもそも興味がなく、事実上、身切り処分品だ。要は早い者勝ち。

 抽選会は三度目だが、一等が出るのもそろそろだと思う。

 

F23、F24 調銭(神社奉納銭)

 主役は古銭ではなく、紙包の方だ。

 時代ごとに、それが「どのように使われたか」を示す状況証拠になる。

 面白いのは、神社向けの調銭として念佛銭を包んでいることだ。神仏が一体だった頃または地方文化の一端が示される。

 一分銀は「八両」の包みと書かれているので、奉納された際には三十二枚の包みだった。恐らく銀地金として奉納された。

 

 古貨幣収集家の多くは、包みや結びに無頓着で、すぐにバリバリと破いて中を検めようとする。「そんなことをしてはダメだ」と制止したことが幾度もある。

 まずは周りをじっくり検分してからで、次に原状復帰が可能なやり方を探し、記録に留めることが大切だ。

 他人の持ち物でも平気で開けて見ようとする人がいるから、蹴り倒したくなる。

 

 今回、日程が詰まっていることもあり、申し込み順に手早く進める予定だ。

 時期的に他の者の手が空かぬので、私自身が対応せざるを得ぬ状況でもある。

古貨幣迷宮事件簿

 

 ちなみに、「10ポイント獲得」で 抽選会への参加権が発生する。

 過去の一等は、私の選択した数字のひとつ前の数字だったが、今回の私の選択は「12」。この数字は予め除外対象とさせて頂く。