日刊早坂ノボル新聞

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◎『リヴェンジ・チェイス 決着の荒野』

◎『リヴェンジ・チェイス 決着の荒野』
 ティム・ロスニック・ノルティ共演によるアクション映画だ。
 背景はコロンビア。
 レナはアメリカ行きを目指し、観光客に偽物の商品を売って資金を集めていた。彼女は町に流れ着いた神父をカモにしようとするが、男は詐欺を繰り返す元軍人で、神父服を着ていることから「パードレ(神父)」と呼ばれていた。
 レナはこの「神父」が米国籍であることから、この男を利用して、米国に行こうと考える。
 レナの妹が教会によって施設に送られていたので、妹に会い、取り戻すことが渡航の目的だ。
 過去に「神父」は妻を失っているのだが、妻の父親がそのことを恨みに思い、コロンビアまで追い掛けて来る。
 レナと神父は教会から聖杯を盗み、資金を調達して、米国に渡ろうとするが、やがて対決の時がやって来る。
 「神父」役の詐欺師・泥棒がティム・ロスで、父親役がニック・ノルティになっている。

 映画の基本コンセプトはロード・ムービーで、「神父」とレナが逃避行を通じて、絆を育んで行く姿を描いている。
 たぶん、監督は『ペーパー・ムーン』という詐欺師親子の出て来る映画を観ており、スーパーでのお札交換詐欺の場面は、まるっきり、この映画の一場面と同じ。(こっちはライアン・オニールテイタム・オニール父娘が主役の秀作だった。)

 今はやさぐれたオヤジが、自らの懐に飛び込んで来た女の子のことを、何時しか娘のように思うようになる。これが物語の基本ラインで、娘の視線で構成されている。
 ティム・ロスは何と言っても、あの『フォー・ルームス』の演技があるから、こういう詐欺師役ははまり役だ。
 あえて表情を作らない演技こそが、「神父」のキャラを引き立てる。

 女性にとって、一番きれいな時期のひとつが、少女から大人の女性に移る過渡期の姿なのだが、レナ役の女優も上手に演じている。
 その意味では、一番良いシーンは、逃避行の途中でモーテルに泊まるところだ。ベッドに「神父」が横になると、レナが隣に来て、すぐに寝入ってしまう。
 「神父」は少しドキッとするのだが、レナは父親に対するように心を許している。
 ここの演出は巧みだ。
 追い駆ける義父は娘への愛情から「神父」を殺そうとし、「神父」は娘のようなレナを守ろうとする。

 映画館では「客が入りにくい映画」で、実際、入らなかっただろうと思う。配給会社はそこを考えて、原題の『神父』からアクション映画風の題に替えた。
 でも、本質は「心の機微」を描くもので、オヤジにはたまらないと思う。自分に娘がいれば尚更だ。
 役者なら、この役柄は「やりたい」と思うことだろう。

 大衆に受ける映画では全然無いのだが、こういう映画づくりは生き残って行って欲しい。