日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎女を泣かすオヤジ

◎女を泣かすオヤジ
 看護師にアラ50くらいの東北出身の女性がいるのですが、やはりよく話が合います。
 年末年始は帰省もせず、勤務だったようなので、労いのつもりで声を掛けました。
 「今年は里帰りが出来ませんでしたね」
 「仕事でしたからね」
 「お父さんは娘が来なくて張り合いがなかったでしょうね」
 この人の実家では、父親が一人で暮らしていると、前に聞いたことがあります。

 「お正月には、自分で作った干し柿を送ってくれました」
 「おお。そりゃスゴい」
 「父は何もやらない人でしたが、母が亡くなってから独り暮らしで、全部自分でやるようになっています」
 当家は次女がまったく家に帰って来ないのですが、父親の気持ちが自然と重なります。
 「父親には、やはり娘が一番だからね。春になり少し暖かくなって来たら、行ってあげるといいよ」
 ここはどうしても父親目線になってしまいます。
 オヤジの心境をさわりだけ話しました。

 ここで軽口。
 「じゃあ、お父さんが娘のためにわざわざ作ってくれたのなら、干し柿を齧りながら、さぞ泣けただろうね」
 女性が炬燵に入って、卓上の干し柿に手を伸ばし、ひと口齧ります。干し柿は、郷里の父親が娘のために心を込めて作ったものです。そこで、ふと気付くと、無意識に涙が頬を伝っている。
 そんな場面が目に浮かびます。
 こりゃ俳句、じゃなく短歌のほうだろうなあ。

 そこで視線を上げると、看護師の目からぽろぽろっと涙がこぼれていました。
 イケネ。「お父さんに会いに行きたい」と思っていたのですね。そこをピンポイントで貫いてしまった模様です。
 すかさず、ひとつふたつ冗談を言いましたが、看護師は「Kさんに泣かされたわ」と言って、去って行きました。

 正直、ちょっと「萌え」っとしました(苦笑)。
 ま、感覚的には、もはや小学生みたいな心境に近付いています。
 しかし、この辺の「心の機微」を掴まえる手練手管に習熟したら、一流の「詐欺師」、じゃなかった「書き手」になれるだろうな、と思った次第です。