日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

トラウマ

10年間くらい埼玉県のT市に住んでいたことがあります。
結婚してすぐにそこに住むようになったのですが、住み始めると同時に妻がアレルギーぜんそくになり、たいそう苦労しました。
ぜんそくと格闘しながら、上2人の子どもの育児をしなくてはならず、妻も大変だったと思いますが、ダンナの方もまさに辛酸を舐める思いをしました。
中小企業主で毎日14、15時間働く必要がある上に、病弱な妻の代わりに子どもたちの面倒を見る必要があったからです。
妻のアレルギーぜんそくが悪化し、専門病院に頻繁に通っていた頃、3人目の子どもができたのですが、妊娠初期にはそれと気づかず、しばらくの間、妻はぜんそくの薬を飲み続けていたのです。
妊娠がわかった時、たまたまアレルギーぜんそく薬の副作用について知る機会があり、病院で相談しました。
専門病院の医師は、夫(すなわち私)だけを呼び、「子どもに障害が出る可能性があり、このまま産むかどうかはよく話し合って考えたほうがよい」と告げました。
私は妻に対し、「もしかするとそういう可能性が無いわけではない」とだけ話し、自分としては「授かった子だから、たとえ障害が出る可能性があっても育てたい」という希望を伝えました。
妻は元々カトリックでしたので、異存はありません。

この頃の住まいの周辺には、廃棄物の中間処理場(焼却施設)が20箇所以上あり、常々大気汚染が問題とされていました。
それでも日中は煙は汚染を感じさせるほどではなかった。
それもそのはずで、周辺の処理場は、どちらかと言えば排出が目立たない夜の間にフル稼働していたのでした。そのため、夜の11時、12時に辺り一帯が煙に巻かれるといったことも頻繁に起きていました。
この地域で盛んに栽培されているのはお茶ですが、これに含まれるダイオキシンが基準値の何十倍かであったというニュースが流れたのもこの頃です。
焼却場がこれだけ集中していてはそれも当たり前です。

3人目の子どもが生まれ、T市から隣接するS市に引っ越すことになったのですが、妻のアレルギーぜんそくは転居と共に次第に快方に向かい、今では発作は年に1回起きるかどうかの水準です。

自分自身、家族の健康から派生した問題でかなり苦労したのと、子どもへの気苦労から、この当時の経験がトラウマになっていることに最近気づきました。
特に3人目の子については、「もしかして障害があるのかも」という思いがあり、小さなことでもドキッとします。
怖ろしいのは、子どもをけなされたり、子どもに危害を及ぼすような「たった一言」によって自分が過激な行動に走るかもしれないことです。わずか一言でスイッチが入り、平然と相手を殺しに行くことだってやりかねません。
新聞やテレビでは、毎日のように殺人事件のニュースが報道されますが、当事者になるきっかけは案外身近にあるように感じます。
また、その時こそが長い間抱えたトラウマから解放される時なので、心のどこかでそれを待っている自分をも感じます。

ところで、T市の状況は今も大して変わっていないはずだと思いますが、S山茶を飲む時には「どこどこ産」まで確かめて飲んだ方が良さそうです。少なくともT市は避ける。
焼却場のチェックは普通、行政が動いている日中に行いますので、夜間の稼働状況については把握されていないはずです。
ダイオキシンの再検査の結果についてはいくつか疑問がありますので、抜き打ちで何箇所か調べに行った方がよいと思いますね。妻のぜんそくの発症の経緯を見る限りにおいては、必ず異常値が出るはずだと思います。