◎「花は咲く」(仮) 一戸より出た天保銭
少しずつ次作『花は咲く』(仮)の準備を始めることにした。
まずは物証から少しずつ取り揃えていく。
図は20年以上前に一戸の商家から出た天保銭だ。
代々の商家で、町に数軒だろうから、名前も特定出来る。
コイン業者のOさんがこの家に呼ばれて行くと、百枚前後の天保銭を見せられたそうだ。
総て未使用貨で、「盛岡藩が作った」とされる型、製作だ。
主要な製造場所(銭座)は栗林と浄法寺山内で、前者が3万枚、後者が30~40万枚製造されたようだ。
この品は、山内座の2回目の鋳銭で作られたもののようで、大半が少し小型になっている。大きなものもあるが、地金の色がこれと同じなので判別は容易い。
盛岡天保の「未使用品」は大半がこの時出たものだ。
古文書などもあり、浄法寺山内座には一戸商人が物資を納入していたらしい。
銭の密造は楢山佐渡が指揮していただろうから、地元商人でないと情報が漏れる可能性がある。「だから一戸商人」というわけだった。
やはり楢山佐渡の話にしてしまうと、全然面白みが無いから、松岡錬治ら「銅山役人が画策して」のストーリーラインだと思う。
ちなみに、普通の天保銭は当時700円くらいだったが、この品は2万円以上した。当方は割と早く買ったのだが、2万5千円強だった。
Oさんは業者さんだから、もちろん、知らぬ振りをして一括で買い取ったとのこと。
古銭の収集家は「未使用だ」とありがたがっているかもしれないが、古銭はきちんと使われた品の方が信用できる。
この金色の品を見る度に、「こりゃ一戸のヤツだ」と思うのだが、もちろん、そんなことは言わない。
収集家は「手の上の品」しか見ず、「何故」「どうして」とはあまり考えない。
今は収集家を卒業したので、大体は「物好き」に見える。
こんなのは「歴史の証拠品」であることを除けば、「ただの金クズ」だ。
大型の品であってもこの金色のものは、この時の品で、Oさんは5百円で買っている(たぶん)。これを読んだら、高額で買った人はさぞ興醒めざんしょ。
ところで、佐渡や松岡は、藩の財政を救うために、贋金を作ることに命を賭けた。
今の役人は保身のために平気で嘘を吐く。
「たまたまその日にシュレッダーで裁断しました」
昔と今は全然違う。