◎「南部写し」の仕上げ (2)
前回は同じ「俯永」という銭種を取り上げ、仕上げ工法について考察したが、徒然のことながら別の銭種もある。
しかし、既に大半を手放してしまい、手元にあるのはわずかである。
小字、正字とも、輪側は「斜め鑢」なのだが、正字は若干、縦方向寄りとなっている。厚さが薄くなっていることが関わっているのかどうかは分からない。
ちなみに、存在数は本座銭であれば、俯永、小字とも同程度で、正字が若干少ないのだが、「南部写し」の場合は、俯永が最も多く、小字、正字の順に少なくなる。
密鋳当四銭に共通することだが、俯永が4、5割を占める。
さて、次は果たして「増郭手法を加えたのか」ということになる。
14の俯永に、既述の大頭通(18とする)を並べてみると、確かに本座銭には厚さである。鋳造貨幣の山は台形をしているから、表面を研ぐと、幾らか幅広となるのだが、研ぎ落しによる変化を超えているのではないか。
これについては、類品を集め、さらなる考究を続ける他に手立てはない。
ま、まだ証明するには足りぬが、大頭通は「称浄法寺銭の仕立て」の系列品ではないかと思う。これと同じ仕上げ方法を取っているのは、大迫駒引き(背大)の銅母銭である。
称浄法寺銭についてのこれまでの見解は、肯定論否定論ともいずれも印象を語るだけで、議論するに値しない。
少なくとも、仕上げ銭の一部は、製造手法から見て、「限りなく山内座のものに近い」と言える。
その逆もあり、鋳放し銭の一部は「絶対に山内座とは繋がらない」ものもある。
いずれにせよ、型分類や印象論からは、永久に答えは出ない。
かたや製造手法に着目する人は、コレクター全体の1割に満たない。
成分を分析したいところだが、これには割と費用が掛かるという難点がある。