日刊早坂ノボル新聞

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◎古貨幣迷宮事件簿 「さらに密鋳銭あれこれ② 離用通写し」

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様々な離用通

◎古貨幣迷宮事件簿 「さらに密鋳銭あれこれ② 離用通写し」

 前回の話の続きになるが、地方貨幣、とりわけ密鋳銭を主戦場にするようになると、入札やオークションに参加する機会が激減する。「珍しい銭種」を並べることには、ほとんど意味が無くなるためだ。

 それに気づいてからは、主に撰銭をするようになる。

 だが、ウブ銭の入手機会は限られているし、雑銭が最も高価なのは、出所に最も近い地域だから、その高額なヤツを買わねばならない。

 枚単価35円が下値で、50円くらいになるのはざらにある。

 1万枚買えば35万から50万だが、そういう入手機会が来る方が珍しいから、チャンスがあれば黙って入手することになる。

 ちなみに雑銭は大都市に向かうにつれて枚単価が安くなる。途中で漏れ落ちる部分生じるためだ。買い出しから骨董業者に入ると、そこでめぼしい母銭は消え、コイン業者では分かりよい希少銭種が消える。ただ、密鋳銭だけは、割と残っていることが多い。

 いまだ地方出身者でないと関心自体を持たぬことが多いし、よいテキストが無いから、見分けがつかない。

 ま、公設銭座の銭種なみに、点の有る無し、微妙な書体の違いを認識するような「型分類」を始めると、密鋳銭では「あっという間に五百種八百種」になってしまう。

 何事もやり過ぎると全体像が見えなくなる。

 「葉の茂れるを見て、幹を知らず」「森を知らず」になりかねない。ま、あくまで道楽であるから、これは好き好きによる。

 私は「作りかた」のみに関心があったから、金の配合や砂づくりの相違について、事細かに見てしまうのだが、収集家に話をしても、ほとんど聞いてくれる者はない。

 

 少し細に入った話が出来るかどうかは、次の質問をすることで分かる。

 「密鋳当四銭の銭種で、俯永や小字はともかく、正字、大頭通や離用通、大字の存在比率はどれくらいか」

 これを、明和や文政のそれと同様に眺めているとすると、その人はほとんど「撰銭をしていない」人だから、その先の話をしても意味はない。そこで話題は終わり。

 

 密鋳当四銭の中で、「離用通」を拾うのは、まさに至難の業なのだが、しかし、運がよければ、まだ拾える可能性がある。「離用通写し」はそういう銭種だ。

 ちなみに、「大頭通」も、まあ何とか拾える可能性がある銭種だ。だが、大字はほとんど無い。一生に一度あるかどうかだろう。

 明和期にそれなりの数が作られていれば転用もされたろうが、文政期で、かつ割と少ない銭種では、鋳銭職人の手の上に載る可能性はかなり少なくなる。

 

 前置きが長くなったが、こういう事情で、「離用通っぽい」銭を見付けると、さすがにドキッとする。

 今回の画像は「取り置き箱」に残っていた品だが、8)と9)は本座銭、10)と11)は「もしかして密鋳銭かも」と思わせる品だった。

 ただ、密鋳写しの場合、本来備わっていた特徴が変化したり消失したりしてしまう。

10)はヤケ銭のようだし、11)は俯永との違いが明瞭ではない。

 そこで、これを機会に詳細に検分するものとした。

 

 まずは輪側の仕上げに着目する。

 8)は金質から見て明和なのだが、よく使われており摩耗の度合いが激しい。斜めに線条痕が見える箇所もあるが、使用傷と見分けがつかない。明和であれば向かって横方向、すなわち「縦鑢」となるのだが、右側の図では明らかに縦鑢である。地金が固いから、明和で問題はなさそうだ。

 9)は分かりよい。亜鉛・鉛の成分が明和期のものよりも増えており、地金が柔らかい。

 歴然とした「縦鑢」である。

 

 さて、10)はどうだろう。

 線条痕の向きが揃っていないことと、乱れていること、また主に斜め方向に筋が走っていることが見て取れる。概ね密鋳銭と見て問題は無さそう。ただし、当初の見立て通り、多少、ヤケが入っているのだろう。表面が泡立っている。

 

 11)は江刺系の密鋳銭であることが表裏の特徴から見て取れる。輪側は斜め方向の不規則な処理になっている。

 

 さて、次は銭種である。8)から10)は割と判別しやすく、「離用通」の書体の特色を備えている。問題は11)だ。

 肉眼で見ると、離用通の分かりよい特徴のひとつである「永」字頭が臥しているいるように見える。ただしスキャナで撮影すると、それほどでもないので、迷いが生じる。

 そこで、さらに俯永写しを加え、他銭と並べて、書体を比較してみた。

 すると、困ったことに双方に似た部分がある。だが決定的な箇所が曖昧なので、何とも言えぬが、今のところ「俯永の写し」ではないかと思う。

 

 ひとまず現在の結論は、10)は密鋳銭の「離用通写し」(少ヤケ)、11)は同じく「たぶん俯永写し」となる。

 砂抜けがきれいで、かつ密鋳銭の特徴も兼ね備えていてくれれば、分かりよいのだろうが、そこは密鋳銭だ。銭(貨幣)として使うべく作ったのであって、好事家を喜ばせるためにそうしたわけではない。

 

 注記)このジャンルに割く時間が無く、推敲や校正が出来ませんので、一発殴り書きです。よって不首尾は多々あると思います。