◎古貨幣迷宮事件簿 「さらに密鋳銭あれこれ③ 安政銭風の密鋳銭」
黒っぽい地金を有し、穿内と輪側が割合立っている寛永当四銭がある。
外見は安政銭に似ているのだが、しかし、粗雑なところもあり、首を捻らされる。
指の腹で触ってみると、輪側の感じは、まさに安政銭の感触である。
それでは「もしや安政銭を材に取って、密鋳銭を仕立てたか」と考える。実際、穿と輪側をすっきりと処理してあるなら、母銭改造を試みるには作業が楽である。
ところが、銭径が割合い大きいので、安政銭でも、安政銭に材を取った密鋳銭でも無いと考えるに至る。
実際に、輪の句の様子をマイクロスコープで確かめると、極めて細かで不規則な報告に線条痕が走っている。安政銭では、穿に棹を通し、その棹を回転させて粗砥に当てるから、線条痕は横一方向に揃っている。
はっきりしたことは言えぬが、例えば、鎌や鉈、包丁を研ぐ時に使う平砥石の上で、棹通しの銭を走らせたら、こういう鑢痕になり、かつ全体として平らになるのではなかろうか。
がっちりしたつくりで、母銭の台は明和銭であるように見える。
備考)使える時間が少ないので、なかなか体が空かず、当期出品まで漕ぎ付けない。
追記)何かシステムにエラーがあったらしく、画像が消失していたのと、文章を校正した箇所が欠落していた。