◎古貨幣迷宮事件簿 七月の品評(続)
S27 盛岡八匁銀判(岩手県内在住者限定)
ネットで出ている「真贋不明の品」の価格水準を下値とした。もちろん、岩手県の古銭会のO会長からK会長を経て伝わったもので、疑いの無い真正品。真正品に間違いない品としては破格だ。
「なるべく地元に戻す」という方針なので、対象を「岩手県内在住の人」に限定することにした。
この品のポイントは下記の通り。
1)出所が概ね分かっている。盛岡市内であればふたつの町のいずれか。(町名を書くと、それを利用されるので記載しない。)または主要な代官所、銭座等、出先機関的な窓口には見本を送付したらしい。それ以外は無し。市中には流通しなかった。
よって、まず「どこから出たか」を確かめる必要がある。
2)極印に「隠し」と言われる特徴があるかどうかは、真贋には関係がない。逆に隠しがあっても、それを模倣した精巧な品があるので注意が必要だ。
3)銀判を叩き伸ばす時に金梃を台にしたのだが、この滑り止め用の線条痕が銀判に移っている。また、量目の微調整などで、少し削り取った時の筋が残っている。
これは「使用傷」ではなく製造時の特徴で、新製品の証拠であるため、擦ってきれいにしてはダメ。
これが無くツルンとしていれば、ほぼ後出来の作品になる。
4)両替印の無いものが多いが、「1つだけ」打たれたものがある。
量目が一両に足りないので、市中での使用は無理だが、日頃、藩と付き合いのある御用商人に対しては、半強制的に押し付けたようだ。
某町の商人の蔵には、今もこの銀判が数百枚眠っているとのこと。
5)地方判は使用済みのものの方が少ない。可能な限り、「実際に使用されたもの」を選ぶこと。ただし、当品で複数の両替印が打たれたものはほとんど発見されていない。
ネットに出ている怪しい品にも、偽両替印が打たれているので、総合的に判断する。
「どこから出て、誰が所有していた」かを調べる方が早道になる。
「どこぞの蔵から出た」という話なら、実際にその蔵に行き、確かめること。
ここは給付金の使いどころ。もちろん、下値付近で落とせるとは限らない。
リスクが少なく資産になる。
たまたま引退のタイミングでなければ保証付きは出て来ない。