◎古貨幣迷宮事件簿 「当て小判・縁起小判」
週末にネットオークションに出す予定の品です。
古貨幣というより「古道具」のジャンルになりますが、真鍮製や銅製の小判型は、かなり古くから作られていたようです。一般に「当て小判」と呼ばれ、「小判の製造時に枚数を数えやすくするために使われた」とされますが、後に神社やお寺で縁起物・招福祈願用の品として作られるようになった品も混じっているようです。
「熊手」や「箒」、「錢のなる木」などに付けられているのを見たことのある人も多いと思います。
外見上、区別がつき難いわけですが、表の刻印に「壱両」という額面表記のある品は、おそらく明治以降のものと考えられます。贋金の嫌疑を掛けられることのないよう、「両」が通貨単位であった時代には、この表記が避けられたのでしょう。
ひとまず「両以外の表記」と「両表記」は区分出来ると思いますが、詳しいことは分かりません。
N05は、この手の品としては存在数が多いものですが、裏側に両替印(井)のような刻印が打たれています。通常、「井」は「井筒屋」を指すことが多いのですが、これとよく似た両替印が本物の小判にも打たれています。当て小判は数百枚ほど見ましたが、両替印もどきが打たれている品はこの品だけでした。
(追記:「井」は棟梁印にもあるので、もしこれがそれに関係していれば、現実に枚数数えに使っていたふしがあることになります。この場合は、超貴重品で本物の大衆小判より珍しいと思います。)
N06、N07は元文小判のサイズに合わせて作成されたようです。
N08は文政型のサイズで、表は「壱枚」。
N09は縁起小判の類と思われますが、大黒の印が押されています。取り柄は「かなり古い」ことと「意匠が珍しい」こと。見栄えが良くないことは逆に長所だと思います(現実に古い)。
N10は表に「壱両」に似た刻印がありますが、「両」の略字ではないようです。しかし、かなり似ているので、ひとまず縁起小判の方に入れておきます。
N11は縁起(招福)小判のようで、①はいわゆる「戎小判」。②③は飾り物に吊るしたようで、上部に穴が開いています。
いずれも雑物の類ですが、この系統の品にも熱心なコレクターが居られるようで、ネットオークションでは一枚も落札できませんでした。
昔は古道具屋でよく見かけたものですが、今ではほとんど見なくなりました。