◎竈神を洗われてしまう
木曜日に病院から帰ると、家の入口に「竈神(かまどがみ)」が干してあった。
家人に「どうしたの?」と訊くと、「埃だらけだから洗って置いた。乾燥させるために外に出した」とのこと。
オイオイ。こりゃ少なくとも130年前のものなのに。トホホ。
「竈神」は主に仙台領で竈の上に飾られた家の「守り神」だ。火事を出さないように見守ってくれる神様ということ。
小さいサイズのは、明治の半ばくらいの普通の家のだが、でかいのは「村で1軒」の庄屋の竈にしか飾れない。家が大きく、柱が太くないと、この重量は支え切れない。
一刀彫りの品を洗ってしまったら、時代色が失われてしまう。
時代を測るには、「どの家から出た」という具体的事実と、煤の厚さしかない。
竈の上にあるから、自然と煤が付くのだが、これがどのくらい付いているかで、年数を目測することが出来るのだ。
見た目が素朴で、アマチュアが作ったような雑なデザインだが、歴史の証人だ。
北上から江刺の間で「古屋下げ(解体)」があり、そこで出たのを買い取ったものだが、こんな雑なお面なのに5万はする(しかも初値だ)。
小さい方も5千円くらいだが、これが「竈神」だって知識も、いずれ次第に風化していくだろうと思う。
盛岡藩でも幾らか使われており、郷里の畑からこれが出たことがある。
私が死んだら、ゴミとして出されてしまうかもしれぬから、早いうちに博物館に寄贈して置こうかと思う。
たぶん、これを買う人はいない。既に「竈神」をそれと認識できる人も少なくなっている。