◎謎が完全解明
エレベーター事件の真相が明らかになった。
前提として、1)安全センサーの不具合、がまず存在している。
患者を片っ端から当たってみたが、幾人かは「これまで1、2度動かなかったことがある」とのことだ。
皆に起きているなら、機械の不具合がまずは原因だろう。
だが、私は毎回止まってしまう。
そうなると、他の人とは条件が違う要素も確実に存在すると思う。
「二か月で1、2回」と「乗る度にいつも」では、やはり起きていることが違う。
機器の説明を読んでみると、謎が氷解した。
安全センサーには「赤外線」を使用している。
最初の赤外線カメラでの検証の際に、「煙玉」状の球が写ったが、あれはいつも私の周りに出るものだろう。
私の周りには常に沢山の煙玉が回っており、時々、画像に残る。
赤外線センサーであれば、入り口付近を煙玉が動けば、それに反応してドアを停止させてしまう。
「ビー」と警告音が鳴るのは、「そこにひとがいると認識したから」ということだ。
以上は、一つ目の解釈だ。
だがもう一つある。
「目には見えぬが、赤外線を当てるとそれと検知できるようになる」存在がもう一つある。
煙玉だけでなく、私の周りには、幽霊もよく集まる。
幽霊をじゃらじゃら引連れているから、センサーがそれに反応してしまうケースもないわけではない。
「それなら、煙玉なり幽霊をセンサーから引き離せば、ドアは閉まる」
そう考え、エレベーターの奥の壁に背中がくっつくくらい下がった位置に居たら、すんなり動いた。
一人の患者は「閉ボタンを押しっぱなしにすると閉まるよ」と教えてくれたが、そんなのはひと月前にやっている。
次からは、「誰も踊りを誘ってくれぬダンスパーティの女子」を想像して、壁の「引っ付き虫」になろうと思う。
「私なんて、どうせ誰も踊ってはくれないのね」(妄想天国)
でも、エレベーターの中に人間(私)は一人なのに、他に5つも6つも「幽霊が乗っている」ことを考える方が面白い。
今度からは対話を試みようと思う。
「センサーがあるから扉の真下に行かないでくれる?」
「全員乗られるようにちょっとスペースを詰めて」
何せ「お迎え」を回避する最も有効な手立ては、「衝突しない」「脇をすり抜ける」というやり方だ。
手なづけてしまえば、引き立てられずに済むのではないかと思う。
まだ常識があった頃なら、私でも「バカな話」だと一笑に付しただろうが、「そんなことを言っていたヤツがいた」ことは頭に置いた方がよい。
私が生きていられるのは、「遠縁の金太郎さんがお迎えを回避した」実体験を聞いていたからだ。
いざその場に立った時にふと思い出すこともある。
まずは対話を試み、交渉することだ。
もちろん、前々から心の準備をしていない限りはかなり対処が難しい。
ほとんどの人は「お迎え」を見たが最後で、そのまま「あの世」に去ってしまう。