◎古貨幣迷宮事件簿 「よく分からない大頭通と密鋳銭等(整理品L05)
掲示の大頭通は、当四雑銭に混じっていたものだ。
地金が明和でも文政でもなく、やや厚くて若干重い。
このため、「贋作では」と見る人もいるが、銭種的に贋作を作成するほどのものではない。特徴は次の通り。
1)明和の写し。故意に厚く仕立てている。(本銭より厚い)
2)面背を研いでいる。
3)増郭加工を施してある。
4)輪側は斜め、横主体の古い仕立て(グラインダではない)。
あくまで推論だが、鋳写し母銭製作に関係しているものだと思う。
2)は延展銭、踏潰銭に多用される技法で、3)は密鋳銭ならでは。
贋作なら増郭をする必要が無いし、むしろ逆効果になる。本銭に増郭銭は存在しないので、加工行為に意味がない。
ただ、不採用となったようで、削字や内郭の穿内への加工には及んでいない。
不採用の理由は「厚すぎた」ということであろう。銭密鋳の目的は、利益追求だから、可能な限り薄くし、効率をよくする。
他は「密鋳品等」で、事実上、オマケだ。オマケなので検品もしていない。
よって、「あらゆる返品不可」条件となる。
もし私が悪人であれば、穿内と輪を加工し、幾らか文字を刻むふりをして「密鋳銭の鋳写し母銭」と称する。
むしろ見すぼらしい方が密鋳銭らしいし、大頭通は銭種的に少ないので、評価対象になるだろう。
あくまで研究材料としてということ。