次の週には、私自らが運転し、往診に向かった。
門をくぐると、まず見えるのは池で、その向こうには大きな館が聳え立つ。
この辺一体は戦後の開発でできたはずなので、この地に大正時代からの洋館があること自体珍しい。
玄関の呼び鈴を鳴らすと、しばらくしてドアが開いた。
老メイドが現れ、私を中に導く。
ホールからいつもの小部屋に進み、テーブルに腰掛ける。
小部屋と言っても、ここは30畳以上はある。いったいこの館に部屋はいくつあるのだろう。
周りのことなど、これまで一度も聞いていなかった。
5分くらいの後、レイコが現れ、メイド2人に何事か話している。
2人は軽く頭を下げ、立ち去った。
ははあ、センセイのことは私がお相手するからここは下がってもかまわない、とかナントカ言ったのだな。
私にも、色々と想像するだけの気持ちのゆとりが出てきたようだ。
レイコが近づき、「どうぞこちらへ」と私を別室に招く。
この部屋には、ホールに繋がるドアのほかにも2つのドアがついていた。
導かれるままに一番奥のドアから隣の部屋に移る。
そこも先ほどの部屋と同じような殺風景な部屋で、中央には大きなソファが置かれていた。
「どうぞお掛けになって」
請われるままソファの中央に腰を下ろすと、レイコは向かい側ではなく私の隣に座った。
「センセイ。寂しかったわ」
私の手を取り、自分の胸に添えた。
「ほら、こんなにドキドキしてる」
口を寄せ、長いキスをした。
「ダンナが2階で寝ているのに、こんなことして良いのか」
口づけの後、聞いてみる。
「夫は起きられないし、たとえ起きても階段を下りられないわよ」
今度はレイコの方がキスを求めてきた。
「それに」
レイコの左手が私の股間にさりげなく触れる。
「もう後のことはどうなっても、という感じだわよ」
女の言うとおりで、私のその部分は彼女の顔を見たその瞬間から、既に屹立していたのだ。
女は私のひざの上に腰掛け、首に手を回す。
私が女の腰に手を回すと、やはり今日も下着の感触はなかった。
改めて女の胸に手を添えると、乳の先が鋭く尖っているのがわかる。
体勢を入れ替え、女が私にまたがろうと腰を浮かせた時に、私は急ぎズボンを下ろし、すぐさま没入させた。
全身の生命力が1点に集まるのを感じ、数分のうちに果ててしまった。
「シビれるくらい甘い。こんな感触はもう何年も忘れていた」
ぐったりとソファに倒れている女の背中を撫でながら、私は独り言のようにつぶやいた。
テーブルの上に置かれているシガレットケースから、煙草を1本取り出し火をつける。
ふうっと煙を吐き、最初の部屋と繋がるドアの方を見ると、扉は少し開いていた。
広い館だから、声が通ったりはすまい。
そう考えた瞬間、ドアの隙間越しに人影が動くのが眼に入った。
驚いて、女の方を振り返る。
「おい、誰か見ていたようだぞ」
女は私の膝の上に頭を乗せ、ゆっくりと手を伸ばし私の頬を撫でた。
「誰も見ではいないわよ。それに私は誰に見られても平気」
あれはメイドたちではなく間違いなく男の影だった。
「君のダンナさんは一度も目覚めたことが無かったのか?」
女は少しだけ体を起こし、私の背中に手を回し胸に抱きついている。
「あったわよ」
「ええ?」
「ベッドから降りて、2階の廊下に倒れていたことがあったけど、2年前のその時が最初で最後。その時だって意識があったかどうか」
女はすっかり体を起こし、再び私の首に頬を寄せている。
(続く)