日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

「無情の雨」のコンセプト

11月30日で、「無情の雨」の新聞連載が終了しました。
掲載が始まる前に、知人数人に下読みをしてもらいましたが、女性には不評でした。
殺伐とした内容で、罪のない姉妹が殺される話ですので、当たり前です。
もちろん、この話は男心を揺さぶるオヤジ目線で書いたため、女性陣が「う~ん」と首をひねった表情を見て、逆に「よし」と納得しました。
ドラマは「毒か薬」がはっきりしているほうが、効き目があります。
これで、オヤジ(の一部)は、赤虎に自分を重ねることができるだろうと思ったのです。
 
とりわけ、多くの挫折を味わい、思うようにならない人生を歩んできた者にとって、赤虎は「望ましい男の姿」であり、ヒーローになり得ると思います。
赤虎が心に響かないなら、それは「きっとトコロテンのような生き方をしてきた男」だろう、とまで感じます。
 
赤虎は、民から収奪を繰り返す侍や商人たちを襲い、財を奪い取るのを生業とする盗賊です。
しかし、私利私欲のためそうしているのではなく、強奪した金品を貧しい人々の軒先に、黙って置いて来るのです。
もちろん、義賊などという気取りも持ち合わせておらず、自分でもソコソコの贅沢をします。
これは、戦災孤児で、弟2人を抱え、生きるために盗みを働かねばならなかった幼少期の体験が反映されています。
程なく、「雪の降る朝に」が始まると思いますが、そんな赤虎が魂の救済を得る話になっています。
 
赤虎シリーズは、あと1作を予定しています。こちらは、若き日の赤虎が、たまたま自分と同じような戦災孤児に出会いますが、この子どもが人攫いに連れ去られてしまうのが発端になります。この人攫いが、「猿(ましら)の三次」で、「無情の雨」で、赤虎に殺される男になっています。
猿の三次は、人身売買のため女子どもを攫う悪人で、猿を餌付けして自分の根城のある山を防御しています。猿の餌にしていたのが、襲撃して殺した人たち(要するに人肉)で、赤虎はこの山の猿退治に向かう大湯四郎左衛門と合流し、子どもを救いに行くという筋立てになります。
 
これから死ぬまでに、何十本か作品を書くと思いますが、筆者自身にとって最も思い入れのある物語は、きっとこの赤虎シリーズですね。登場人物のキャラは、総て作者の分身のわけですが、赤虎は「まさにこういうように生きたい」と思う男のモデルになってます。