日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第157夜 アルマゲドンの夜

気がつくと、暗い夜道を独りで歩いていました。
とぼとぼと前に進みますが、頼りにしているのは、長く黒い鉄条です。
道路ではなく、線路を辿っているのでした。
 
「ここはどの辺だろ」
声に出して呟きます。
周囲に人気は無く、歌を歌っても平気なようです。
 
線路の先には勾配が生じているようで、次第に脚力を使うようになってきました。
「よいしょ、よいしょ」
大人になってからは、滅多に使うことの無かった掛け声を口にします。
このゆったりとした坂を上りきると、今度は下り坂です。
すると、遠くの方に焚き火の灯りが見えてきました。
 
500㍍ほど歩きます。
灯りに近づいてみると、やはり線路脇に火が焚かれており、若者が1人座っていました。
「今晩は」
若者が会釈を返します。
「3日ぶりに人に会ったよ」
「俺もだよ。話し相手が出来て良かった」
「何か食う物を持っていますか?」
若者の回りには荷物が見当たりません。まったくの手ぶらのようです。
「チョコならあるよ」
背中のリュックから取り出し、若者に渡しました。
「どうしてここにいるのか。あるいはどこに行こうとしているのか。俺にはまったく記憶が無いんだ。一体ここはどこなんだ?」
若者はチョコの端を少し欠き、口に入れています。
「たぶん、地上では○○湖の近くじゃないかな」
「地上では、ってどういうこと?」
「だって、ここはあの世の境目だもの」
「あの世」
ここで記憶が蘇ります。
確か私はバスの前の席に乗っていて、交差点で・・・。
大型トラックが横から突っ込んできた場面が浮かびます。
 
アルマゲドンが始まる前に、何とか中に入らないとね」
「もうすぐみたいだよ」
ああ、スウェーデンボルグか。アルマゲドンはあの世で起きる「霊界の整理整頓」だったな。
「でも、霊界ががたぴしと大変動を起こすんじゃあ、中に入っても同じなんじゃないの?」
「整理されるのは、境目にいる霊だもの。この世とあの世の間で彷徨っている、いわゆる幽霊というジャンルだけで、そいつらが地獄に納まれば静かになる。雲に入っていれば大丈夫」
「雲って、スウェーデンボルグの言う霊団のこと?」
「そう。要するに世間一般では天国とも言う。霊感師なら極楽雲とか言いますね」
「ふうん。じゃ、ここにいたら不味いわけか」
「うかうかしてると、地獄に取り込まれちゃいますね」
「そうか。それじゃあ、あまり休んではいられないね」
これに若者は返事をせず、黙って立ち上がりました。
 
生前は、幾度と無く鉄道の夢を見ました。
いつも○葉県のある駅で汽車に乗り、北に向かうのですが、目的地に到着することなく途中で夢が終わります。
今度は死んでるわけだし、さすがに○○湖の近くまで来たのか。
 
若者と二人で歩き出します。
先ほどより、道の先が明るくなっていました。
上を見上げると、空には星が瞬いていました。
「ふうん。ここでも星は出るのか」
「はは。当たり前ですよ」
 
突然、ピカっと空が光ります。
「何?」
二人でもう一度空を見ると、巨大な隕石がゆっくりと落ちてくるのが見えました。
「でっかいなあ。隕石というより彗星だな。回りを囲む火まで、はっきりと見える」
「あ、あっちにも」
空のそこかしこに、大火球が現れ出しました。
「うわあ」
「すごい。始まっちゃいましたね。アルマゲドン
空じゅうに、火球が飛んでいます。
「これがアルマゲドンか。この世、ではなくあの世の終わり」
「何だか、きれいですね」
「そうだね」
二人で足を止め、空の光を眺めます。
 
ここで覚醒。
12月4日の早朝に見た夢でした。
目が醒めた後も、大火球が落ちてくるイメージがずっと消えません。