日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第256夜 道で拾ったアスリート

昼食後に、少々昼寝をしたのですが、その時に観た夢です。

車を運転している。
もはや夕方で、周囲は薄暗くなっている。
海沿いの街に行こうとしているのだが、近道をしようと山越えをしたら、道に迷ってしまった。
ライトを点ける。

灯りが点いた瞬間に、道の端に黒い塊が落ちているのに気づいた。
危ない。
道の上の「その物」が何となく生き物のような気がしたので、慌てて急ブレーキをかけた。
なんとか直前で停まった。
轢かずに済んで良かった
大きさからして、鹿や熊くらいはありそう。

車を降りて、様子を見る。
転がっていたのは、なんと人だった。
しかも女性で、20台の半ばくらいの年恰好だ。

「こんなところに寝転がってたら危ないだろ」
女がよろよろと体を起こす。
「ここどこ?」
「ここは○○市の手前8キロくらいの山の中。あんたはなんでここにいたわけ?」
酒臭い。
明るいうちからだいぶ飲んでたんだな。
「男とケンカをして・・・」
放り出されたか。見ればわかる。
「なるほどね。でもここは熊が出るところだよ。男を罵るにしたって、場所を選ばなきゃね」
ま、ここまで酔っぱらってれば、それも無理だろ。
「○○まで乗せてってくれない」
「ここに放り出すわけには行かんだろうから、とりあえず街まで乗せてってあげるよ」
オレの言葉に応じ、女が立ち上がる。
この女は、まるで鹿みたいな筋肉質の体つきをしていた。

しばらく、夜道を走ると、街の灯りが近づいて来た。
「ねえ。オジサンはどこに泊まるの?」
「オレは確かにオジサンだが、まだ三十半ばだ。十も違わないのだから、名前で呼んでくれ」
「なんて名前?」
「※※」
「名字じゃなく、下の名前」
「ケンジ」
「分かった。これからはそう呼ぶ」
ま、あと十五分かそこらの間だけどね。

「ねえ。ケンジさんはどこに泊まるの?」
「岬ホテル」
「いいホテルじゃない」
「良いも悪いも、〇〇にはそこしかない」
「お願いがあるんだけど」
「何?」
「私も一緒に泊めてくれない?」
「泊まるところを決めてないの?」
「私を放り出した男が隣町に予約してたけど・・・」
今さら行く気はしない、というわけだ。

「田舎町だから、空いている部屋があるかもしれないな」
「でも・・・」
思わず横の女を見る。
この女。どこかで見たことがあるような気がする。
「あいつが荷物を持ってった。だからお金もカードもない」
「わかった。部屋代くらい貸してやるよ」
面倒くさいことは御免だけどな。ここは仕方ない。

しかしホテルに着くと、既に満室だった。
もはや暗くなっており、今から宿を探しても近くには見つからない。
2人で顔を見合わせると、すぐにフロントが口を挟んだ。
「ご予約されているのはダブルですから、同じ部屋に宿泊されてはどうですか」
オレより先に、女の方が「それで結構です」と答えた。

見ず知らずの男女でも、同じ部屋で寝ることになったら、妙な雰囲気になる。
オレはそれを察し、「ソファで寝る」と言うと、女は「私がソファ」と言い張った。
「ま、オレが予約した部屋だし」と、オレはベッドで寝ることにした。
しかし、3時ごろに目覚めると、女はベッドの上にいて、オレの胸に顔を埋めるようにして眠っていた。
最初の印象と違って、寝顔はかなり童顔だった。
オレは少し体を離して、反対側を向こうとした。
すると、女がオレの胴に両手を回して、「起きてるよ」と言った。
女がもう一度、オレの胸に顔を埋める。
そこから先は、やはり男女がなるような成り行きになった。

朝になった。
女はなかなか目を覚まさない。
9時ごろになり、ようやく女が目覚めた。
ふわあっと背伸びをしている。
その姿を見て、オレはその女が誰だったかを思い出した。
コイツは確か、高校生の時に短距離走日本記録に「あと0.05秒」で走ったヤツだ。
その後、国体はハードルで優勝。
オリンピックの候補選手にもなったのではなかったか。
その後は「アマチュアでは食えない」と言って、幾つかのプロ競技に移った。
どの競技でも、すぐに一流の境界線には達するような能力を持っている。
テレビ局が主催する「忍者もどき」の番組でも、2度優勝したはずだ。
筋金入りのプロのアスリートだ。

なるほど。この街には、何かの大会に出るために来たわけだな。
思わず声を掛けた。
「今日は試合じゃないのか?」
「うん。昼から」
「試合に出るのに、昨日今日とこんな調子で良いのか」
「どうせローカル大会で、私は客を呼ぶための招待選手。もちろん、私が優勝するけどね。でも、行きたくないなあ。今日みたいな試合」

その言いぐさで、頭の血管がぶち切れた。
「お前な。なんだよそりゃ。お前は何をやっても一流付近まで行けるかもしれんが、あくまで一流付近だ。どれ一つとして、最高の水準とは言えない。それはお前が1位とか、賞金額とか、見てくれやかたちを追っているからだ」
突然、オレが切れ始めたので、女の眼が丸くなった。
「スポーツだけでなく、どの道でも同じだろ。自分の限界に挑戦する気持ちが無くて、本当に満足できるのか。お前の求める結果とは、人に褒められることか、人よりも金持ちになることか。そうではあるまい」

自分が何かを達成した証が、メダルや賞金で済むのなら話は楽だ。
だが、けしてそうではないだろ。

この辺で、自分が「今は夢の中にいる」ことに気づいてきた。
かなりデフォルメしているが、これは自分自身を叱咤する夢だ。
どういうジャンルに首を突っ込んでも、ソコソコの、かたちだけの成果は残せる。
成果が見えなければ、あるように見せ掛ける技術も知っている。
果たしてそれでいいのか。

ここで、オレは女に向かって「お前。お前はもっとやれるんだからトコトン行けよな」と叫んだ。

ここで覚醒。

理不尽な展開で、理不尽な終わり方をするところが夢の夢たる所以です。
アスリートではありませんが、「自堕落な女」は私の「心の持ちよう」が形を変えたものでしょう。
腹をくくって、ひたすら前に進めよな。