夢の話 第435夜 悪夢2題
火曜の午前2時頃に観た夢です。
布団の上に仰向けに横たわっている。
どうやらそれまで眠っていたらしい。
頭のほうに誰かが立っているのに気付いた。
男なのか女なのかも分からない。まるで影のよう。
その影が口を開いた。
「お前に残された時間はもう残り少ないよ。そろそろ仕度しろと言ったでしょ」
身辺の整理をしたり、保険を組み替えろ、という意味だな。
「お前の準備が整うのを待ってるんだよ」
え。オレは「程なく死ぬ」が、今は猶予期間だってこと?
「いやいや。オレには霊感はありません。今はきっといつも通り夢を観ているのです。だから、あなたの言うことはオレが頭で作り出した妄想ですよ。だって、以前は夢で数字を見せてくれたのが、そのままロト6だったり的中馬券だったりしたのに、今は夢にはっきり見えても現実には少しずれている」
土曜日に万馬券を当てているのに、その夜に次の日の情景を見せられるもんだから、全部アガリを溶かしちまった。しかもわずかな順目違いだぞ。
慌てている時には、我知らず饒舌になる。口に出す言葉だけでなく、頭の中で考えている事でも同じだ。
「じゃあ、夢でも幻でもないという証拠を見せてやろうか」
「止めてくれ。動かしがたい現象を付きつけられたら、それを事実として受け取るしかない。目が醒めた時から、オレの生活は、掃除とオレが死んだ後の手配だけになってしまう。人は明日になにがしかの『きぼう』があるから生きて行けるのだ」
頭の上の影がもぞもぞと動く気配がある。
「おい。止めてくれと言ってるだろ!」
この時、オレはもう半ば以上は覚醒している。起きている時の「オレ」と同一人物だ。
「よし。目を醒まそう。そうすればコイツだって消える。だって、これは只の夢なんだからな。オレには霊感はない。無いと言ってくれ」
瞼がうっすらと開く。
オレは居間の床で横になっていた。昼寝をする時の定位置だ。
オレの周りでは、家じゅうから「ピシ」「カタ」「トン」「ドン」という音が鳴り始めた。
「ラップ音を出すのは止めろ!」
ここで完全に覚醒。
目が醒めて、最初に考えたことは、「部屋の掃除や、死んだ後のことを整えるのは止めよう」ということだ。
今が猶予期間なら、なるべく長く引き伸ばす手だ。
お湯を飲み、また元の場所に座ると、すぐに眠りに落ちた。
今度の夢の中のオレは40歳くらい。現実のオレとはまったくの別人だった。
電車に乗って、どこかの街に行こうとしている。
ある女と会うためだ。
その女は、オレが昔付き合っていた女の筈だが、それがいつのことなのかオレの記憶にはない。
駅を下り、1キロ近く歩いて、その女のマンションのドアを叩く。
呼び鈴ではなくノックだった。
「たぶん、今が夜中だからだな」
周りの情景が見え始める。今は夜中で、近所は寝静まっている。
到着時間を告げてあるから、女のほうも軽いノックだけでオレと分かる。
扉が開く。
女の顔が現れる。まったく記憶にない顔だった。
(オレよりだいぶ若いな。30幾つなんだろ。)
部屋の中に入り、ソファに座る。女が自然な動きで隣に座った。
その素振りで、オレはオレがこの女と男女の関係にあることを悟った。
(まあ、夜中の2時に部屋を訪れるんだから、そういう関係でない訳が無いな。)
この場になっても、まだ記憶がおぼろげだ。
女がオレにコーヒーを渡す。ブランデー入りのコーヒーだった。
(え。そんなの飲んだことは無い。オレならブランデーだけだろ。)
女が1度自分のカップに口を付ける。左手でカップを持っているが、その手首に切り傷が見えている。
それを見るオレの視線に、女が気付く。
「貴方のせいでこんなになったんだからね」
うーむ。理解に苦しむ。どうやら、オレとその女は不倫?かなんかの関係にあり、ドロドロの状態らしい。その女はオレに結婚を迫るか何かをしている。
「自殺しようとしたのよ」なんて類のことを伝えたいらしい。
「それはおかしいぞ。それならこれはオレの人生じゃない」
オレが「妻と離婚してお前と結婚するから」というロジックを使うことは無いからだ。
「有り得ないな」
ここでオレの記憶がゆっくりと甦る。
オレは何十年も前から、この女と一緒にいる。
起きている時とは別の世界だが、オレの妻や子どもはここには存在しない。
眠りに就くと、その瞬間に、別の世界の住人になっているのだ。
程なく、オレはこの女と一緒に暮らす筈だ。
ここでオレは自問する。
「オレはこの世界に何百回も来ている。何十年もここで暮らしている。いったいどっちがオレの現実で、どっちが夢なんだろう」
どれがオレ本来の人生なんだろ。
ここで覚醒。
夢の中の「最初の異性」は、自分の人格が変化したものらしいです。
後段の女には、左腕に生傷がありましたが、これは当方自身の腕にあります。
もちろん、自傷で出来た痕ではなく、手術で得た傷痕になっています。
これを毎日見ているうちに、頭の中でドラマを編成したのだろうと思います。
最初の夢が重かったので、心を平静に引き戻すために観たのでしょう。