どうにも寝苦しく、2時間と続けて寝られません。
これは朝方、そういう状態で観た夢です。
目が醒めると、オレはどこか水の上にいる。
板のようなものに掴まって浮いているのだ。
回りは真っ暗。
「何があったんだっけ?」
頭を打ったらしく、よく思い出せない。
ボツボツと記憶の断片だけが残っている。
ヨットに乗っていたような気がするなあ。
小型のヨットで、動力はなし。
自分1人で乗ったのは初めてだった。
夕方になり、港に戻ろうとしたが、うまく操れない。
狼狽えているうちに、大型船に衝突して転覆したのだ。
オレは海に投げ出されて気を失った、というわけだ。
とりあえずは「良かった」と思わねば。
溺れ死んではいないという意味でだ。
さて、どうやって岸に戻ろうか。
眼が慣れて来ると、海岸からそれほど遠くないことに気がついた。
だが、オレは次第に沖に流されていることも分かった。
潮の流れはかなり早く、時速換算で数キロはあるようだ。
ノットだとどうなるんだっけか。
そんなことはどうでもよい。
何とかして生き残らなくては。
海水温は30度弱だろう。
オレはウエットスーツを着ていないので、生きていられるのはほぼ一昼夜だ。
海水温が30度なら暖かそうだが、体温が36度なので、6度の温度差がある。
水温が36度なら、水に浸かっていられるのは、概ね2日から2日半。
これが1度低くなるごとに、生きていられる時間が4時間ずつ減って行く。
今は温度差が6度なので、逆算すると1日から1日半だ。
オレはどうやら半日以上は海の中にいるので、このまま流されていると、1日以内に溺れ死んでしまう。
正確には低体温症だが、これもどうでも良い。死ぬのは同じだからな。
潮流にのって、オレは見る見るうちに沖に離された。
こりゃダメだ。絶望的な状況だな。
「母さん、ごめん。オレは親より先に死にそうだ」
船は沈んだが、今はオレの心の方がもっと深く沈んでいる。
首を長く伸ばして、周りを見るが、船は見当たらない。
こういう時くらい、近くを通り掛かれよな。
オレは観念して、両目を瞑った。
それからどれくらいの時間が経ったろうか。
眼を開くと、周りが少し明るくなっていた。
しかも、わずか5、6百辰里箸海蹐北┐見える!
なるほど。
ここの潮流は円を描くように、渦を巻いていたのだ。
オレはツイてる。
海岸に近寄る手前で泳ぎだせば、渦潮の力を借りて岸に泳ぎ着けるかもしれん。
オレは板を離して泳ぎ始める。
さっきの絶望感はどこぞへ行ったやら、だ。
人間が強く生きていくには、何がしかの希望が必要だってことだな。
ははは。
ここで覚醒。