日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎ 夢の話 第442夜 蔵の整理

◎ 夢の話 第442夜 蔵の整理

火曜の朝5時ごろの夢です。
 母に頼まれ、祖母に新巻鮭を届けると、祖母がひと言オレに告げます。
 「蔵の整理をしてくれないか。そろそろ取り壊すつもりだが、博物館に入れるべきものは入れて、そうで無い物はお前にやるよ。済まないが、日当はお前の取り分ということで頼めないかね」
 母の実家は旧家で、常居が40畳くらいある。床の間と合わせると60畳前後なので、地域の集まりは皆ここでやった。隣近所の冠婚葬祭もここだ。
 蔵も大きくて、中には何でも仕舞ってあった。刀や甲冑の類と、昔の農具、それと・・・。
「甕に入った明治の銀貨だ」
蔵自体がちょっとしたお寺のお堂位の大きさだが、小学生の時に入ってみたら、1暖召らいの高さの甕に、一円銀貨が山ほど入っていた。
 昔、東北本線を敷設する際に、政府は用地を買収する代金として、円銀で支払ったと聞く。幕末に藩が不換紙幣を濫発したものだから、領民は紙の金を信用しなくなっている。だから、意図的にそうしたと言うのだ。
 「きっとそれだよな」
 ざっと見で8千枚はあった。8千枚の勘定は、重さが百キロくらいだという見当だ。
 「たぶん、それで費用は賄えるだろ」
 銀地金なら庁牽葦澆そこらだが、円銀なら市場に出して値が半値に下がるとしても、何百万かにはなるだろ。

 「確か寛永銭は500キロくらい金屑屋に出したんだよな」
 天保銭なんかは、木箱にひとつあったのを、孫が山に持って行き「手裏剣だ」と言ってまき散らしたらしい。主にオレの兄とそこの家の孫が犯人だ。
 銀貨よりそっちの方が勿体ない。祖母ちゃんの家の山では、6千枚の天保銭が朽ち果てている筈だ。
 オレは古銭の収集をしているが、祖母ちゃんの家ほど大量に古銭を抱えた家を、その後の人生でも見たことがない。

 とりあえず、作業小屋からだな。
 財源がある事が分かっているので、まずはプレハブの作業小屋を建てて、蔵の中身をそっちに移すことにした。紙類は湿気でアウトなので、雨に当てないことが肝要だ。
 「何度も夢に観るくらい、ここの蔵開けを望んでいたが、よもや実現するとは」
 プレハブ小屋を買うと百万かかるので、オレは自分の貯金を下ろして一か月レンタルのものをで使う事にした。これで30万。
 人件費の見当は、オレが1日3万7千円で、お運びの人足が1万5千円だな。
 「よし。3人ほど雇おう」
 刀や甲冑もあるから、窃盗団が来る可能性がある。夜はオレが小屋に泊まらねば。

 作業を始め、まずは蔵から17棹くらいの箪笥を出した。
 中身は大半が着物だ。
 次に葛籠が十台。こっちは古文書の類だ。
 「ありゃりゃ。刀や甲冑は何処へ行った?。それと銀貨の入った甕も」
 重要な品が見当たらない。
 「そう言えば、骨董好きの親戚が毎年の夏休みに遊びに来ると言っていたな」
 普段、蔵に鍵は掛けていない。
 あのオヤジめ。目ぼしい品を持ち出しやがったか。

 さすがに顔が青くなる。
 このままでは、オレが百万から2百万くらい持ち出しになってしまう。
 「それでも、一度引き受けたからにはオレがケツを拭かねばならんな」
 ま、祖父ちゃんや祖母ちゃんには散々可愛がってもらったしな。
 オレの古銭のコレクションの大半は、この家からもらった物だ。そいつを崩せば何とかなるだろ。でも、やはり「トホホ」だ。

 すると、目の前に、オヤジたち4人が箪笥を運んで来た。
 「あ。金太郎さん」
 金太郎さんは、分家のオヤジさんだ。
 「おいおい。箪笥が重くて腰が痛いよ。こりゃ今の日当じゃ、割が合わないぞ」
 え?4人で運んで、まだ箪笥が重いって?
 オレは思わず、オヤジさんたちを引き留めた。
 「ちょっと待って下さい。小屋にお茶を用意してありますから、休憩して下さい。薬缶には酒も入ってます」
 オレの言葉を聞き、オヤジさんたちがさっと小屋の方に移動した。
 「さっきまでと違って、動きが早いな。酒という言葉が効いたか」
 オレは重い箪笥に近付き、引き出しを抜き出した。
 「やっぱり」
 引き出しの奥に「隠し」があった。
 その隠しを開けて見ると、思った通り、銀の丸い板が入っていた。
 「おお。八匁銀判だ。こりゃツイてる」
 ざっと2百枚はありそうだ。
 「助かった。これでどうにか」
 次の引き出しを開けて見る。こっちは丁銀が2包みだった。
 
 その時まで気が付かなかったが、オレの近くで、その様子を見ている者が居た。
 初老の男だ。
 「あ。あなたは」
 オレの同級生のお父さんだ。オレは子供の頃から骨董趣味があったので、同じ趣味を持つそのお父さんとは仲が良かった。同級生本人よりもお父さんと話をする。
 「さすが、君は引きが強いな」
 「でも、親戚の家の品ですから」
 お父さんはここでニヤリと笑った。
 「それが終わったら、オレの家のもやってくれないか。他にも、整理を頼みたいところは沢山あるから、この世界じゃあ、君は山ほど働かなくてはならないよ」

 「この世界。ここって、オレの田舎じゃないの?」
 冷静に思い返してみると、祖母・祖父、近所のオヤジさんたち、同級生のお父さん、と、オレの前に現れた人全員が、もうかなり前に亡くなっている人だった。

 ここで覚醒。

 あの世に行ったら、やはり今みたいに、あちこちから蔵の整理を頼まれるのでしょうか。
 祖父母の家に、山ほど古銭があったのは事実で、今も木箱ひとつ分が手元にあります。