日刊早坂ノボル新聞

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◎古貨幣迷宮事件簿 「青錆の除去 その3 銀貨のトーン除去」

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イオン交換による錆の還元

◎古貨幣迷宮事件簿 「青錆の除去 その3 銀貨のトーン」

 繰り返し前置きをするが、私は近代貨に興味を持ったことが無い。このため、扱いにはかなり無頓着である。

 さて、どこの家庭にある道具で、「ほんのちょっと見栄えを良くする程度」の錆除去の話の続きになる。

 当たり前だが、青銅貨と銀貨では扱いが変わって来る。

 銀には短期間のうちに黒ずみが生じる。これはネックレスや銀食器などで時々目にする。

 銀の変化には次のような違いがある。

1)酸化 : 白くなる。古い銀貨で、割と丁寧に仕舞われたものは、「粉を吹いたように」白くなる。この場合は酸化だ。

 明治中期に東北本線(鉄道)を敷設するにあたり、用地を買収した時の代金として、専ら円銀の明治三年が用いられた。このため福島以北の路線に沿って、明治三年円銀が蔵出しで出ることがある。

 三十年くらい前に、そんな「蔵出し」直後の円銀を見せて貰ったことがあった。和紙で丁寧に包まれ、箪笥の奥に仕舞われて来たその銀貨の表面は、まさに「粉を吹いたように」白かった。不純物の混合の程度にもよるが、純銀に近い組成のものが「百年経っても鏡のように光っている」などということは現実にはない。

2)硫化 : 薄く黒いトーン。これはごく短期間のうちに着く。純銀であれば硫化は割と時間を要するが、銀貨には幾らか他の金属を混ぜてある。空気中の硫化水素や亜硫酸ガスとの反応で生じる。簡単に着くが、簡単に除去できる。

3)塩化 : 塩素と化合する場合にも黒い変色が起きる。こちらは除去が難しい。

 

 このうち、頻繁に見られるのが2)硫化で、この場合のみ、重曹による還元が可能である。アルミ箔容器の中の重曹(炭酸水素ナトリウム)にお湯を注ぐと、水酸化アルミニウム水酸化ナトリウム炭酸ガス・水素が発生する。この水素(H2)が銀製品表面の酸化銀(Ag0)を還元して、ピカピカの銀(Ag)と水(H2O)に変わる。

 こういう理屈だ。

 具体的には、非金属製のボウルにアルミホイルを入れ、熱湯を注ぐ。そのお湯に重曹を溶かし、銀貨を数分程度漬ける。たったこれだけだ。

 

 実際にやってみたのが画像1と2だ。

 コレクションには不向きのまだらにトーンの入った銀貨を、二分間ほど洗浄(還元)したが、実際に黒変が目立たなくなった。

 なお、元々、状態が悪く、「洗おうが洗うまいが並品」であるから出来たことで、通常は錆の除去は他の個所の変色を招くことがあるので、あまりお勧めできない。

 

 ここで思い出すのは、前回の銅貨だ。前回は重曹を表面に塗りつけるだけだったが、熱湯ではどうか。

 銅貨は銀貨以上に色むらが出やすいので、「熱を加える」行為は避けた方がよい。

 と、ここで終えるつもりだったが、「何故ダメか」を実証した方が分かりよいので、前回の二銭銅貨に適用してみることにした。

 その結果が画像3と4だ。

 出来立ての十円玉が手ずれで変色を始めた時のように、表面全体に不規則な色むらが生じる。青錆以外の個所は、それなりに良い味だったのに、嫌味さが出てしまった。

 ま、青錆の個所はほとんど分からなくなってはいる。