日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第531夜 山登り

◎夢の話 第531夜 山登り
28日の午前4時に観た夢です。

「人生の最後に姫神山に登ろう」
オレはそう決意して、その山に向かった。
郷里の実家に着き、車を下りる。
「ありゃ」
車のガラスに映ったオレの姿は、初老の男ではなく少年だった。
「こりゃいったいどういうことだろ」
ま、いいや。体が軽くなるのは助かる。

「でもどうしてここからなのか?麓まで行けばいいのに」
オレの実家は姫神山の西の登山口にある。
山自体は家の近くだが、それでも7キロくらい山道を登らねばならない。
歩き始めて分かったが、道路が所々崩れており、車が通れなくなっていた。
最近、大きな地震があったらしい。
「これじゃあ、麓に着くのは夕方だ。今日はそこでキャンプをして明日の朝山に登ることになるな」
ま、気長に行こう。

道を歩いていると、オレの他にも山道を登っている人たちがいた。
五人、十人、三十人と、進むに連れて登山者が増える。
気が付いたら、何百人もが同じ山を目指していた。
「ここじゃあ、珍しいよな。こんなに人が出るのは山開きの時くらいだろう」
行列を為して、山に向かう。

道程の八割を過ぎると、展望台が見えて来た。
オレはこの展望台を見たことが無い。
「こんなところがあったっけか」
オレがそう呟くと、隣の中年男性が答える。
「これはごく最近出来たんだよ。最近の天変地異のおかげで、この山に行く人が激増した。だから途中で休むところが必要になったのさ」
そうだったのか。トイレと休憩所が必要なくらい登山者が増えたわけだ。

展望台に入り、建物の上に上ってみる。
四階建てで、かなり高い建物だった。
「雰囲気はまるで天守閣だよな」
建物の四隅を回るように階段が作られている。
一番上の階に行くと、西に岩手山、東に姫神山が見事に見えた。

「おい」
突然、背後から声を掛けられた。
振り返ると、そこにNが立っていた。
名前が「N」なのは、単に思い出せないからだが、オレの知り合いであることは間違いない。
「お前も来てたのか」
「ああ。お前の方はどうして?」
「俺はあの地震でな。家が無くなった」
ああ、あの震災か。関東を襲った大地震で、五輪も万博も無くなったんだっけな。
(万博?五輪はともかく、万博のことはオレは知らないぞ。)
それなら、何万人もの人がここに向かっている理由も分かる。

「こんなに混雑してるんじゃ、山の上まで行列だな」
「ま、仕方ないよ」
二人で展望台を降りる。
山道には、既に五千人くらいの人が並んでいた。
再び歩き始める。
それから、ほんの百辰曚豹覆鵑聖?里海箸澄
何気なくオレが後ろを振り返ると、地面がゆっくりと動いていた。
「不味い。地震だ」
オレたちは岩盤と岩盤の間に立っていた。
「おい。ここは崩れるかも知れん。岩の方に移ろう」
Nにそう伝えると、オレは横の岩によじ登った。
その岩を乗り越え、さらに大きな岩の上に上がった。
ちょうどその時に、ガタガタと地震が来た。
すると、さっきまで立っていた山道が崩れ、深い穴が出来た。
何千人もの人がその穴に飲み込まれる。
「うわあ」「ぎゃあ」
沢山の悲鳴が聞こえるが、オレにはどうすることも出来ない。
ただ呆然と見守るだけだ。

ほんの1、2秒のことで、岩の上に登れたのはオレとNだけだろう。
そう思った時、横から声が聞こえた。
「よく気が付いたな」
顔を向けると、ケンゾーが立っていた。
ケンゾーはオレの幼馴染で、この辺のことには詳しい。
「ケンゾー。お前も来てたのか」
「ああ」
「この状態じゃあ、もう山には登れない。元来た道を戻るしかないな」
「道?道なんかもう無いだろ」
それもそうだ。
「ケンゾー。お前なら戻り方を知ってるだろ。案内してくれ」
「まあな。じゃあ、俺について来ればいい」
三人で山道を下り始める。

「地盤が緩くなっているから、岩盤を渡り歩くしか方法がないんだよ。だからかなり遠回りになるが、余震でやられるよりはいいだろ」
「全部お前に任せるよ」
山を下って行くと、突然、崖の上に出た。
目の前は峡谷で、底には川が流れていた。向こう岸までは三百辰らいありそうだ。
「こんなところあったっけ?」
「さっきの地震で出来たんだろうな」
それにしては土石流が見当たらない。
川幅は百辰曚匹世、水が澄んでいるのが上からでも分かる。
こんな大きな川はこの地域には存在しないはずだが。

目まぐるしく事態が動くので、これまで冷静さを欠いていたが、ここでオレは我に返った。
「ところでケンゾー。お前は今までどうしてたの?」
「俺?」
ケンゾーが少し口ごもる。
「俺はずっと死んでたんだよ。お前が思い出してくれたから、こうやって出て来られた」
すると、あの山は・・・。この川は・・・。

ここでケンゾーがオレの目を見据えて言った。
「お前ね。お前はまだこっち側の者じゃないんだよ。早くこの川を渡って、向こう側に帰れ」
ここで覚醒。

姫神山は奥州有数の霊場でした。昭和40年ごろまでは山の麓で大勢の山伏が修行していました。