日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第528夜 レストハウスで

夢の話 第528夜 レストハウス
6日の午前3時に観た夢です。

眼を覚ますと、ベッドで横になっていた。
オレはシャツにネクタイ、ズボンを穿いたままだった。
「ここはどこ?」
ベッドの前に衝立があり、向こう側から何やら話し声が聞こえる。
起き上がって、様子をみる。
話し声は何かイベントの打ち合わせで、テーブルに五六人が座って会議をしているのだった。
「すると、ここは仮眠室?」
部屋ではないな。囲われては居ないもの。
この状態なら、オレが寝ていたことを、この人たちだって知っているはずだよな。
そう考え、衝立の向こう側に出て行くことにした。
オレの顔を見ると、同僚らしき男が声を掛ける。
「お。大丈夫か。休まずに働いていたから、疲れたんだろ。ゆっくり寝てればいいよ」
なるほど。オレは会議中に倒れたのか。

そう言えば、このところ働きづめだった。
毎日十七時間は会社の机にいて、寝起きするのも会社だ。
それが1年で358日。休んだのは1週間だけだった。
倒れるのも無理はない。
しかも、こうやって生きて目覚めたのだから、また仕事をしなくては。
「では出発します」
オレは打ち合わせの途中で退席し、出張に出ることになっていた。

オレは後輩と一緒に車に乗り、出張に出発した。
行き先は高原にある町で、片道が4時間半だ。
半ばを過ぎた頃から山道に入り、うねうねと曲りくねった道を進む。
山を登ったり降りたり、の繰り返しだ。
「そろそろ休もうか」
そう後輩に言うと、すぐに店が現れた。
コンビニ?いや、昔風の売店だった。
喫茶コーナーもついているから、まあ、「レストハウス」と言っても良さそうだ。
オレは駐車場に車を止めた。

外に出ると、駐車場の向こうには渓谷が広がっていた。
季節は秋の終わりで、遠くに紅葉が見えていた。
「おお、すごいぞ」
駐車場の手すりの外には、20辰らい下の方に幅が30辰らいの川が流れている。
周りはごつごつした岩と、赤く色づいた木々だけだ。
「ここはきれいですね」
何時の間にか後輩が隣に立っていた。

突然、グラグラと地面が揺れ始める。
「あ。地震だ」
かなり強い地震で、わさわさと世界が揺れた。
鳥たちが飛び立ち、木の葉がバラバラと下に落ちる。
近所の家の犬が盛んに吼えている。
しかし、地震は数分で収まった。

「わ。あれを見てください」
後輩が指差す先を見ると、岩の間から蛇が出ていた。
地震に驚いて這い出て来たのだ。
オレは「この時期でも蛇はまだ冬眠していないのだな」と別のことを考えた。
出て来たのは蛇だけではなく、ムカデとか、普段は岩の下にいるような虫たちも、居場所から逃げ出していた。
「スゴイね。こんなに生き物が隠れていたのか」
すると、大きな岩の向こう側から鳥が飛び立った。
体長が50センチ以上ある鳥で、尻尾が長い。
色鮮やかな色調だった。
「おい。あれって始祖鳥じゃないか」
図鑑や博物館で見た模型とそっくりだった。
「まさか。恐竜がいるわけないですよ。あれは確か『極楽トンボ』です」
おいおい。そっちの方がおかしくないか。
と、考えている場合ではなかった。
渓谷のあちこちから、鹿やトナカイが走り出て、山の方に駆けて行く。
リスなんかは何十匹も走っていた。

ここでオレ達はレストハウスに向かった。
テラスに上がると、男の子が立っている。
男の子は何かを一心に見詰めていた。
視線の先には、小動物がうずくまっていた。
後輩がオレに語りかける。
「タヌキですね」
タヌキ?白と黒の模様だぞ。
頭の中で「こいつはパンダって呼ばれるヤツじゃなかったか」と思うが、まあ、どうでもよい。
ほんの30造らいの大きさなので、男の子が頭を撫でようとする。
オレは思わず制止した。
「あ。駄目だよ。タヌキは見た目より獰猛で、手を出したら噛み付いてくる。指を噛み千切られちゃうよ」
男の子が俺を見上げる。
まるで、オレの息子が小さかった頃にそっくりだ。
「息子?28歳のオレに息子はいないぞ」
何だか、自分自身の存在に現実感がない。

しかし、男の子は我慢しきれず、タヌキの頭に手を出した。
「痛い」
案の定、手の甲を引っ掛かれてしまった。
オレは男の子を抱き上げ、中に連れて行くことにした。
「すぐに消毒しないとな。タヌキは黴菌だらけだもの」
犬と近いから、狂犬病もあるんだったよな。
「この白黒タヌキめ」
足を床でどんと踏み鳴らすと、タヌキが慌てて逃げ出した。

男の子を預けて、またテラスに戻ると、客たちが下を見ている。
テラスの外には小さな池があるのだが、そこで白黒タヌキが溺れていた。
大慌てで逃げたので、池にはまってしまったのだ。
「コイツ。本当に迷惑で、手間が掛かるやつだな」
誰かが拾い上げようとすると、「襲われる」と勘違いするのか、もの凄く抵抗する。
しかし、泳げないらしく、浮いたり沈んだりしていた。
「こういうヤツ。人間でも居るよなあ。独りじゃ何も出来ないのに、自意識過剰で、結果的に他人に迷惑を掛けてばかりいる」
ま、仕方ない。
オレが何とかしてやるか。
周りを見渡すと、壁に釣り用の網が掛かっていた。
オレはそれを壁から外して、池に伸ばし、タヌキを掬い上げた。
テラスの床の上にタヌキを下ろし、網を外してやる。
体を拭いてやりたいが、そこで噛み付かれる可能性があるから、オレはそのまま放置することにした。
すぐに客たちが集まって来る。
十人、十五人、二十人と数が増え、皆で白黒タヌキを眺めている。

「タヌキだ」
「珍しいね。このタヌキ」
「どこから来たんだろ。このタヌキ」
ここで客の一人、二十三歳くらいの女がオレに話し掛けて来た。
「手際が良いですね。タヌキが助かって本当に良かったです」
この時、オレの頭の中で何かがプチッと切れた。

そこでオレは皆に向き直って大声で叫んだ。
「おいお前ら。いい加減にしろ。コイツはタヌキじゃなく、パンダなんだよ!」
ここで覚醒。

脈絡の無い、夢らしい夢でした。