日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第533夜 穴

◎夢の話 第533夜 穴
11日の午前5時に観た夢です。

オレはフリーライターで、雑誌に旅行記を書いている。
多くはその土地の古い話を絡めた内容だ。そこで、オレはいつも全国各地を回っている。
さて、昔から、「洞穴を抜けると、その先に別世界があった」という話がある。
日本では「今昔物語」にも載っているが、たぶん、その前から言い伝えがあるのだろう。
伊豆の山の中に、そんな穴の伝説があるらしい。
その話を聞いて、早速、オレは現地に飛ぶことにした。

穴は案外簡単に見つかった。
昔の金山の裏手の方に、小道があり、そこを上っていくと、2時間ほどで穴の前に着く。
ご丁寧にも、「時の穴」というボロい看板が掲げてあった。
「時の穴かあ。タイムトンネルってことだよな」
穴の伝説では、別の世界に行ったり、別の時代に行ったりするものだが、ここは後者らしい。
「でも、これじゃあ、観光スポットだよな」
秘境でも何でもありやしない。
説明板を読むと、穴の深さは全長150辰らいらしい。
30辰泙任枠追澆の道があるし、灯りもあるが、その先は「進入禁止」になっている。
「おいおい。30辰犬磴◆客は呼べんだろ」
実際、観光客が来ている感じではない。
オレはヘルメットやらライトやらと、穴に入る支度をして来ていたから、禁止ロープを乗り越えて奥に進んだ。
洞穴には珍しく、背丈の立つ高さを保ったまま奥まで行ける。
「なるほど。ここも採掘跡なんだな」
だから、穴のサイズに規格があるわけだ。
「それじゃあ、『時の穴』ってのは、観光用に後から取って付けたものだってことか」
どうやら無駄足だな。まあ、こういうことも多い。

オレは取りあえず一服して帰ろうと、腰を下ろした。
しかし、その時のことだ。
グラグラと地面が揺れ始めた。
「よりによって、こんな時に地震かよ」
これまで経験したことの無い揺れ方だ。
大地ごと数十辰皺3蠅蠅靴討い襪茲Δ粉恭个ある。
天井がガラガラと崩れ、岩が落ちてきた。
「ああ。オレはここで死ぬのか」
だが、何とか潰されはしなかった。
揺れが収まった時、オレがよろよろと立ち上がってみると、穴の入り口の方が完全に塞がっていた。
「やっぱり駄目じゃんか」
こんな地震では、この辺一帯が相当やられている筈で、そうなると人が助けに来るのはだいぶ先の話だ。
山なら登山者名簿があるが、穴にはない。
オレがここにいることを知るのは、オレの他には誰も居ない。
オレはがっかりして、再び腰を下ろした。

すると、オレの顔の付近にすうすうと風が当たった。
岩の隙間から、風が入り込んでいたのだ。
「おお。もしかして外と繋がっているんじゃないか」
もしそうなら、取りあえず窒息することだけは避けられる。
そこで、オレは風が吹き込んで来る場所を探すことにした。
それは、オレが入って来た入り口の方ではなく、奥の方だった。
奥の岩が崩れ、新しい穴が出来ている。
その穴から風が吹いているのだ。
「あっち側に穴が繋がったのかもしれないな」
いずれにせよ、生き残るチャンスはあるってことだ。
オレは穴の奥に進み、岩壁を押してみた。
岩は簡単に崩れ、先にぽっかりと穴が開いた。
トンネルの向こうが見えたが、かなり先に灯りが見える。
「あれは外だな。あそこに行けば外に出られる」
オレはそっちに向かって歩き出した。

「まさにこんな昔話があったよな」
その話はこうだ。
貧しい男が妻子のために伝説の「宝の穴」に入った。宝を得て、暮らしを楽にするためだ。
穴を抜け出てみると、そこは二百年前の世界だった。
百年前には、そこら一帯が金山で、金鉱がごろごろ転がっていた。
男はそれを拾って、穴に戻った。
男が穴を抜け出ると、出た先は、妻や子のいる元の世界ではなく、百年後になっていた。
男の妻子は既に死んでおり、村も無くなっていた。

「別の世界は見てみたいが、そんな結末は嫌だよな」
しかし、今のオレには妻も子もいないから、もし出られるとしたら、オレの一番好きだった時代に行たいよな。
そしたら、そのままそこで暮らせばいいもの。
そんなことを考えながら、穴に差し込む光を目指し、オレは前に進んだ。
「でも、オレの一番好きな時代って何時の頃だろ」
学生時代?それとも、結婚して子どもが生まれた頃?
でも、その後の経過を知っているわけだから、楽しくはないよな。
オレは妻と離婚して、子どもは妻がオレから連れ去ったもの。

穴の出口が近くなって来たのか、次第に明るさが増して来る。
「ま、元の世界で良いよな。無難に家に帰れればそれで良いや」
地震の被害で、街がぐちゃぐちゃになっていなければいいけれど。
穴の外に出ると、そこは見晴らしの良い高台だった。
はるか下のほうに街が見えるが、特に壊れた様子はない。
「良かった。穴の中だから、地震が実際よりも強く感じられたんだな」
脇に目をやると、下り道がある。
オレはその道を下りることにした。

5百辰曚媛爾蠅襪函家々が近付いた。
家の間に広場があり、そこに人々が集まっているのが見える。
「あれは・・・」
盆踊りだった。3百人くらいの人が集まり、盆踊りを踊っているのだ。
太鼓の音と、音楽が聞こえる。
そこで人々が踊っていたのは・・・。
東京音頭じゃねーか」
これってもしや、ここは2020年なのか。
それとも、60年の方?
「たぶん、昭和39年の方だよな」
三波春夫の陽気な声がからからと響く。

ここで中断。
話が長いので、ここまで。
「時の穴」を抜け出たら、そこは昭和39年の日本で、懐かしいものに溢れていた。
戦後で日本人に最も夢と希望が溢れていたのは、この時代だった。
そんな夢です。