日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第418夜 砂漠で

14日の午前2時半ごろに観ていた夢です。

我に返ると、どこか知らない場所に立っている。
ぐるっと周囲を見回すと、どこもかしこも赤茶けた岩と石だらけ。
「まるで火星みたいな岩石砂漠だ」

ここで、はっと気が付く。
「ここは、心臓が止まってから最初に行くところだ。そうなると」
オレは死んだってことだな。

いつどうやって死んだんだろ。
思い出そうとするが、どうしても思い出せない。
「心臓が止まろうとする時、ある瞬間にばたっと止まるわけじゃない」
まずは、鼓動が不規則になる。すなわち不整脈のひどいヤツだ。
その後、脈の間隔が開くようになり、心停止に至る。

心臓が止まろうとする瞬間には、本人はトンネルの中にいるような気分になる。
真っ暗で、長いトンネルだ。
その先に光が見えるので、大概のヤツはそっちに行く。暗いところから逃れ出たいからだ。
トンネルの外に出ると、火星みたいな岩石砂漠が待っている。

「それがすなわちここだってことだ」
オレは何度か心停止を経験しているから、この砂漠にも来たことがある。
もう少し先に行くと、小川が流れている筈で、それを越えると「あの世」だ。
川を渡ると、もうこちら側には戻って来られない。

もちろん、総ては心象風景だ。
どう見えるかは、人によって異なる筈だ。
トンネルや砂漠も、昔、誰かの体験を読んだことがあるから、それが反映されているのかもしれん。
「だが、どうであれ、それがオレの前の現実だ」
他の者がどう思うか、考えるかなどは、オレには関係が無い。
合理的な考えなど、ここから先は何の役にも立たないのだ。

「しかし、これからどうすればいいんだろ」
幸いなことに、生きていた頃の記憶がオレにはほとんど残っていない。
と、思った瞬間、オレは自分が膝丈まで観ずに使っていることに気付いた。
「うわ。もう川に入っているじゃないか」
なるほど。それで生前の記憶が失われたんだな。

この川、すなわち「三途の川」だって、イメージの産物だ。
ここで洗われることで、総ての記憶が押し流される。
それでまっさらな元の自分に戻り、仲間たちの元に帰るのだ。
「参ったな。ここから先はどうすればいいんだろ」
足が何か岩のようなものに行き当たる。
とりあえず、これで休もう。
そう考えると同時に、水面に岩が出ていることに気付いた。
ちょうど1人が座れるくらいの大きさだ。
ひとまずオレはその岩に腰かけた。

「ここには何回くらい来たんだろ」
数え切れないくらいの回数だよな。
毎回、反省することばかりだった筈だが、それもここを渡った瞬間に忘れてしまう。

「問題は、これからどうするかということだ」
岸に引き返しても、自分が出て来た穴が見つからなければ、川原を彷徨うだけだ。
それって、いわゆる幽霊になるってことだ。
「うう」と声を出したり、写真に写り込んで、誰かを怖がらせるのが関の山だ。
自分が誰かも分からないまま、この世とあの世の境目を徘徊する。
「じゃあ、この川を渡ってしまおうか」
そうすれば、また最初からやり直し。
時が来て、状況が整った時に、別の人間に生まれ替わる。
それも悪くない。

だが、それはどっちの方向だろ。
最初は二十辰らいの川だと思ったのに、今は見渡す限り大海原に変わっている。
前も後ろも同じだ。
「参ったな。完全に立ち往生だ」
ふう、とため息を吐く。

すると、その時、遠くの方から人の声がした。
「オトーサン」
あれ。誰だろ。
「オトーサン。しっかりして」
ああ。女房だな。でも、その女房って誰のことだろ。

声のした方に顔を向けると、その方角には岸が出来ていた。
三十辰四十辰らい渡れば、そっちの岸に行き着けそう。
岸の先には、前に見た岩石砂漠が広がっている。
じっと眺めていると、砂漠の中にある砂利の山のひとつがぐずぐずと崩れ始めた。
あっと言う間に、暗い穴が口を開けた。

「ああ。あそこに行けば良いんだな」
でもどうやって?
そう考えると、川の中にポツンポツンと岩が水面に突きだしてきた。
片足を載せられるくらいの大きさの岩が岸まで続く。
「これを渡って行けと言う意味だよな」
その岩を頼りに、ひょいひょいと岸まで歩いた。

穴はすぐ近くだ。
暗い穴に入ろうとすると、奥の方から「プ。プ。プ」という音が響いてきた。
何だろ?
すぐに気が付く。
「ああ。あれって心電図の音だな」
誰が付けられてんだろ。
ま、いっか。

穴に入り、反対側の光を目指して歩き始める。
何となく、手足の先が暖かくなってきたような気がする。

ここで覚醒。