◎戦国小話 信長編
織田信長が縁側に出て、庭に降りようとすると、木下藤吉郎が走り寄って来て、草履を踏み石の上に置いた。
信長が穿くと、草履が生暖かい。
信長は「これはどうしたのだ」と藤吉郎に尋ねた。
「お屋形さまの足が冷えないように、懐に入れて温めていました」
そこで信長は藤吉郎に言った。
「このうつけ者め」
予想外の言葉に、「へ?」と藤吉郎が驚く。
そこで信長は藤吉郎に言い渡した。
「お前のご機嫌取りも気持ち悪いが、人肌の生暖かい感じはもっと気持ち悪い」
どんとはれ。
現代に置き換えると分かりよいです。
社長のソン氏が料亭から出ようとすると、秘書が靴を揃えて出した。
ソン氏がそれを穿くと、靴が生暖かい。
「これはどうしたの?」
「冬ですから、足が冷えないように私が履いて温めていました。秀吉に倣ったのです」
だから褒めてよね、という雰囲気がアリアリ。
さて、ソン氏はどう答えるでしょう。
きっと「気持ち悪い。お前はクビだ」でしょ。
おべんちゃらにせよ度を越しています。
ちなみに草履の話は、当然のことながら、江戸の中期ごろに作られた作り話です。