日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎古貨幣迷宮事件簿 「青銅貨の状態保持について」

f:id:seiichiconan:20200805184528j:plain
f:id:seiichiconan:20200805184515j:plain
f:id:seiichiconan:20200805184501j:plain
f:id:seiichiconan:20200805184451j:plain
f:id:seiichiconan:20200805184440j:plain
f:id:seiichiconan:20200805184417j:plain
f:id:seiichiconan:20200805184354j:plain

◎古貨幣迷宮事件簿 「青銅貨の状態保持について」

 まずは思い出話から。

 30年前に「雑銭の会」を開いたのだが、その頃は業者さんの店舗の静止画像を掲示したHPだけしか存在しない時代だった。ウェブ古銭会としては、日本最初になる。

 ものは試しにHPに「買い入れ広告」を出してみたのだが、「WWWって何?」という時代が程なく終わり、ネットが身近になると、どっと「買って下さい」という連絡が入り始めた。

 次第に連絡が入るようになり、次には勝手に品物が送られるようになった。

 毎日、宅配便が複数個届くようになったのだが、中身はほぼ99%が近代銭か記念貨だ。

 最初のうちはいちいち値段を付けていたが、近代貨や現行貨を買い入れても、単に滞貨が増えるだけになる。

 未使用の銀貨ならまだしも、使用済みの銅貨やアルミ貨などそもそも値の付くような代物ではない。業者さんは見てもくれず、「中には一山いくら」の値を付けてくれることも「ないわけではない」という程度だ。

 近代貨だけで部屋1つがすぐに埋まり、部屋ふたつ分に届くようになったので、「近代貨・現行貨はお断り」の掲示を出した。

 穴銭がある場合にのみ、「近代貨のみ残されても困る」だろうと配慮し、対応もしたのだが、敵もさるもので、「寛永銭を十数枚と近代貨山盛り」みたいなものが送られて来る。

 さすがにウンザリし、どんどん値段を下げたのだが、それでも勝手に送って来る。

 結局、「買い入れ」自体を止めてしまった。

 こういう経緯があり、私は近代貨にはまったく興味がなく、極めて冷淡になっている。理由は簡単で、「相当な金額を無駄に遣った」からということ。

 銀貨類は地金で、また青銅貨はまとめて売却したし、それ以外は「どうか貰って下さい」と知人に差し上げたり、神社やお寺の境内に撒いたりした。

 清朝銭やら中国銭・鐚銭を含め、東日本の神社仏閣の境内か裏の方で、もし古銭を拾うことがあったら、その元凶は私です。

 

 その頃、僅かながら、金融機関からの申し出があった。

 「金庫の奥に眠っていたものがある」が、古銭だから両替も出来ない。「買い取ってもらえるのか」という照会があったのだ。

 こちらは、基本的にウンザリしているので、「近代貨は扱っていません」と伝えたのだが、最初の金融機関が「金貨もあります」との由だったので、それ以後、金融機関は例外にした。

 地方銀行や農協の金庫の奥に、明治の金銀貨や青銅貨が眠っていることが今も割合あるらしい。1年に1、2度は同じような申し込みが来た。

 枚数も割合大量のことが多く、金貨数十枚、銀貨五六百枚みたいなケースが多かったので、金額的にも大変だった。

 

 前段が長くなったが、そういう買い取りの時に、銅貨類も混じっていたのだ。

 先方はこちらが「近代貨は基本的に買わない」ことを承知していたし、他の金銀貨の総額が多いので、銅貨は「お土産」としてくれるという話で、そのまま無料で受け取った。

 包みを開きもせず放置していたのだが、数年後に開いてみると、中身は明治の初中期の青銅貨ロールだった。

 「おいおい。未使用の青銅貨なら、銀貨よりよっぽどお宝じゃないか」

 そう思って開封すると、実際、ほとんど使われた「ふし」がない。そこはさすが金融機関の金庫に眠っていた品だ。

 

 しかし、残念ながら「未使用」と言えるものはあまり多くない。

 紙に包み、金庫の奥に仕舞ってあっても、やはり錆が出てしまう。

 錆の程度はわずかだが、多くの銅貨が腐食していた。

 貨幣カタログでは、未使用の銅貨の価格が極めて高額に記載されているが、それもその筈で、未使用のまま仕舞われていても、「状態が損なわれることが殆ど」だからということだ。

 

 後になり、ロールで入手した青銅貨のうち、青錆の付着していないものを選び、幾枚か入札やオークションに出してみた。

 近代貨コレクターは穴銭収集家より「状態云々」にこだわる人が多いので、一律、「極美」「1千円」という設定だ。

 個人的には「未使用」の内だと思うが、状態評価など主観的要素の方が大きい。

 しかし、時々、「当たり」があったらしく、「これは完未ですね。有難うございます」というお礼の連絡を貰った。

 かたやクレ-ムを言って来た人もいる。

 傷の無い青銅貨をデジカメでフラッシュ撮影すると、ピカピカの未使用状態に写るのだが、目視した時とは印象が少し変わる。

 「これは画像と違う」と言うわけだ。銅貨の見え方がこうなるというのは、収集家なら知っていて当然の話だが、収集家の仲間づきあいをせずに自分独りで集めていると、そういう基本的な知識が得られない。

 そもそも作り立てのような未使用品を「千円で買える」と思う方がおかしい。

 色が少し変わるのは青銅貨なら当たり前で、無傷に近ければ、十分に未使用だと思う。「未使用」とは、本来、「使われていない」という意味だ。

 

 青銅貨の状態保持は本当に難しい。

 ホルダーに入れたりすると、ビニールは水分を吸着するから、短期間で錆が出る。

 今のところ、「プラスティックケースに入れ空気を遮断し、アルミホイルで包んでしまって置く」のが錆や色変が出難いようだ。

 ま、大体はがっかりして穴銭に向かうか、あるいは刻印のタイプ分けに進むことになると思う。

 ついでだが、エラー貨は「やめとけ」のひと言で、「正攻法に勝るものなし」だろう。もちろん、趣味は個人の好き好きだから、あくまで「部屋ふたつ分の無駄」を経た者の言い草だ。

 とにかくウンザリ。

 

 捨て値で処分したが、20年掛かった。それでも、まだ幾らか残っている。

 なお資料的には、文字が書いてあるロール紙の方が価値が高いと思う。

 こういうのはほとんど残らない。

 明治の初期には、筆で金種金額を書き、封印した。専用の判子を押すようになったのは、まだかなり後の話だ。