◎妖婆に警戒される
火曜の夕方七時付近のこと。
車に携帯を忘れたことに気が付いたので、Tシャツとバミューダ姿で取りに行った。
当家の駐車場は家から50メートル先のを使っている。
駐車場は割と交通量の多い県道を越えた先にあるのだが、携帯を持って家に戻ろうとすると、県道の先から女性が歩いて来た。
私の側の感覚では、「暗がりからぬっと出て来た」という印象だ。
おそらく近所の人なのだろうが、面識はない。
駐車場の隣はコンビニだから、たぶん、醤油とか砂糖が足りなくなり、買いに行こうとしていたのだろう。
その女性(たぶん五十台)の風体が凄かった。
髪の毛が頭の周り50センチくらいの広さに広がっているから、外目では三頭身に見える。
がりがりに痩せており、顔がガイコツに近い(失礼だが)。
ま、ひと言で言えば「妖怪」だ。まさに山姥。あるいは妖婆。
幽霊や妖怪なら、幻覚も見れば本物にも会う状態なので、かなり退いた。
今の私は、もはやどれがどれだか区別がつかない。
そこで、進路が交錯しないように、大きく迂回して、その女性を通した。
するとその動きが不自然だったらしく、その「妖怪」が不意に私に向かって「コンニチハ」と挨拶をした。
(もはや真っ暗なのに「コンニチハ」だ。)
それを聞いて、私はさらに退いた。
「これって、不審者に会った時に『わたしはここの者です』とけん制するために言うヤツだよな」
おいおい。俺って妖怪に警戒されているわけ?
さすがに、どんなもの好きでも、山姥は襲わないよな。
なんだかゲンナリした。
ま、私も最近、髭を伸ばしているから、山賊みたいな風貌だ。
頭が薄くて、髭もじゃらなら、「悪役」が通り相場ではある。