




◎ぐるぐる回らされる(525)
前回の画像に、私的に「もの凄く気味の悪いヤツ」が出ていたのだが、それを買い物の途中で思い出した。
「よし。とりあえず神社に行っておこう」
そこで神社に向かおうとしたのだが、途中で道路工事があり迂回する必要が生じた。
「あとたった五百㍍なのにな。後ろに戻ると二キロで、前に進んで迂回すると三キロだ。戻るのは面倒だから、遠回りでも前に行こう」
どうせ数分しか変わらないわけだし。
細道に入るから、カーナビも使うことにして、神社をセットした。
そのまま進んだが、バイパスが出来ているので、前に通った時と道順が違う。
そこで、その先はカーナビに任せて、それに従うことにした。
すると、想定したのとはまったく異なるルートに向かった。
「あれあれ。この先はもしかして」
あの滝じゃあねえか。
ちなみに、その滝は私が向かう予定の神社を通り越した先の方にある。
ルートの指示は、わざわざその滝に向かい、直前の駐車スペースを通って滝に戻る道順だった。
「これはねえよな」
今朝、ブログに、五年前にあの滝で見た「あの世の視線」の画像を再掲したばかりだ。
なんだか符合しているぞ。
そこで、もう一度迂回し、さらに遠回りの道順を選んでみた。
あえて毛呂山まで行き、そこから旧道を下ることになるが、ま、仕方ない。
もう一度カーナビをセットし直し、「距離優先」で行くことにした。
細かい路地を幾つか曲がり、気が付いてみると、また滝の駐車場の前に着いていた。
「おいおい。呼ばれているわけなの?」
ここで迂回を諦め、結局、元来た道を戻ることにした。
これで少なくとも数十キロは無駄に走ることになる。
結局、元の分岐点に戻り、最初からやり直し。一時間半ほど、周囲をぐるぐると回ったことになる。
神社はそこから五百㍍先にある。これは最初と同じ。
「でも、直行はせずに、まずは裏技を使って置くべきだな」
このまま神社に向かい、もし悪い方の直感が当たったなら、ばっちり変なのが写るかもしれん。
嫌な感じがあった時の手順はこうだ。
お寺があればそのお寺に行き、お焼香をする。あるいは、境内で少しゆっくりと過ごす。
その後でスーパーやコンビニなどの人込みの中に入る。
これで概ね、悪縁を連れ帰ったりはしなくなる。
そこで、間近にある滝不動にお参りすることにした。
お不動さまは、当家の守り神だから、常に意識して暮らしている。
「カーン」と鐘を叩くと、少し心が晴れた。
その後、スーパーと百円ショップに立ち寄った。
店の前に行くと、夫婦が何やら真剣な口喧嘩をしている。
「ふうん。やな感じ」
店の中に行き品物を選んだが、レジ前には線が引いてあったので、その後ろに並ぶ。
レジは二つだが、線はひとつに収束する。
しかし、私の直前になると、床に引かれた線に気付かなかったのか、隣のレジの直前に七十歳くらいの老人が並んだ。
ちなみに、次は本来、私の番だ。
そのレジに老人が並ぶと、レジ係の女性が「横入り」だと気付き、「そちらの後ろに並んでください」と老人に伝えた。
すると、その老人は、びっくりするような大きな声で、「オレはちゃんと並んでいたんだあ!!」と女性を怒鳴った。
反射的に私は身構えた。
(コイツ。俺に殺されたいのか?)
私に向かって直接そんな口を叩いたら、その場で殺すのにな。
すると、私の後ろから、「何か」がするっと離れ、その老人の方に向かって行く。
(あ。コイツはあの妖怪顔のヤツだ。)
「このジジイ、殺すぞ」と思った瞬間、それに反応したらしい。
その瞬間、私の怒りがすうっと消えた。
(あーあ。これであの爺さんは可哀そうなことになるだろうな。)
レジの女性は怒鳴られたので、困ってしまい、私の方を見た。
この子も可哀そうだから、「先にその人を通していいよ」と目配せをした。
若い子を頭ごなしに怒鳴りつける。こんなジジイには礼儀を語る資格はない。
この時、あの「妖怪顔」が出動したのは疑いない。
ということは、あの妖怪顔は、「これまでずっと私の傍にいた」ということだ。
ドキッとしたが、すぐに胸を撫で下ろした。
「ああ、よかった。俺はけして祈願したわけじゃない」
もし、「死ね」とか「殺してくれ」と願ったとしたら、それは「呪う」のと同じことだ。
すると、私はその「ツケ」を背負うことになる。
だが、願をかけていないから、私に反動は無い。
だが、悪縁の見ている前で無暗に人を罵ったりすると、必ず祟りが降って来る。
私には一切関わりなく、その老人の孫は程なくいなくなる。それで終わらぬところが悪縁の恐ろしいところだ。いざ始まれば、延々と続く。
それから、神社に行き、無心で手を合わせた。
異変らしい異変はほとんど感じられない。
境内に入った瞬間に雷が鳴り、数分後には土砂降りになっただけだ。
雷が鳴った瞬間に、「あと一分で前が見えなくなる」と思い、車の中でそのまま待った。
予想通り、雨が降り始め、すぐに土砂降りになった。
そこで三十分ほど車の中で過ごした。
その時に考えたことは、「たぶん、今日はあの滝に呼ばれていた」ということだ。
その後は何を見ても、あの世のもたらす異変に思えるようになったのだが、まさに「薄の揺れるのを見ても幽霊に見える」という状態だった。
だが、あの「妖怪顔」が出動するのと同じ時に、「女」の気配も消えていた。
それなら、滝の前まで行ってみても良かったと思う。
きっと、それで何が起きていたかということの「はっきりした説明」が得られただろうと思う。無事に帰って来られるかどうかは、また別の話だ。
同じような経験が幾度もあるが、この日はむしろ優しい方だ。
いつぞやは、カーナビに導かれるままに進んだら、山の中にどんどん入って行き、車の両脇を草が擦るくらいの小道に入らされた。
そして、どうにも進めなくなったところで、ルートを示すラインが消え、画面が真っ暗闇になったのだ。
あるいは、海岸沿いを走っている時に、「降りろ」の指示があったので、ほぼ一本道の幹線道路を降りると、そのまま堤防の前まで行かされた。
そして、すぐ先は海なのに、カーナビが「直進」を指していた。
そんなときの「薄ら寒さ」よりは、この日の方がよっぽどましだ。
この日、確信が持てたことのひとつは、あの「滝の女」は絶対に「御堂さま」ではないということだ。
「御堂さま」ならこんな振る舞いなどしない。