◎オヤジも「ベビメタ中毒」
仕事をしている時に、息子が急に部屋にやって来た。
ドアを開いて、息子は最初に「え」と漏らす。
父親がBGMで「ベビーメタル」の曲を聴いていたせいだ。
特に言い訳はしなくてよいのだが、何となく息子に説明してしまう。
「ベビーメタルは今や世界のロックスタアだ。もはや日本の誇りとも言える」
オヤジ世代は、バンドの音で「つい聴いてしまう」のだが、気が付いた時には、もう嵌っていた。
「トーサンたちの世代だと、ファンでもなくメイトでもなく、ギャラリーなんだけどね」(言い訳)
要するに、ゴルフの観客と同じで、「遠巻きに取り巻いて、声を出さずに眺めている」聴衆だ。
四十台以降が「つい嵌る」のは、まずは「バンドの奏でる音」からなのだが、全体としては、バンドが「息子」たち、前の女子は「孫娘」のように映る。
そういう風に、子や孫を眺める気持ちによく似ているということなのだが、きっかけなどどうでもよい。
気が付いたら、仕事中はエンドレスで流すようになった。
十年前からのを繰り返し延々と流す。
オヤジが「中毒になる」コースのひとつは、「バンドの音から入り、ユイメタルの笑顔にやられる」らしいが、私もそう。
ボーカルを含め、どの構成要素も「必要不可欠」なわけだが、今はそのうちの2つの人材が欠けてしまった。
ユイメタルは「自身の夢を追求したい」と言って脱退したようだが、言葉が本意ではないことは往々にしてある。
大人であれば想像がつくが、恐らくは転落事故の後、うまくリハビリが進まなかったのだろう。
骨折が癒え、痛みを感じずに動けるようになるには、三年から五年かかることもある。
周囲が気長に復帰を待ってあげるとよいのでは。
「ギャラリー」としては、孫娘が心配でならない。これもギャラリー心理か。
二十歳を過ぎたばかりの息子に父親が「ベビメタ中毒」であることを知られてしまったが、却ってよかったかもしれない。今後はもう隠さずに済む。