日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎自分を宥める

自分を宥める

 少し前のニュースに居酒屋の主人が出ていた。「アルコールの提供禁止措置」に対する意見を求められていたのだ。

 その時、現状について言っていたことは、「毎月3百万以上赤字」だということだ。

 なるほど、十数人も人を使っていれば、当たり前だと思う。

 アルコールを飲ませ、その客があれこれ注文してナンボの商売なのに、前提の酒の販売を禁止されたら、どうにもならん。

 腹の中は文字通り「忸怩たる思い」だろう。

 

 当方もかれこれ一年以上も「まったく仕事が無い」状態だ。

 自分の我慢のストッパーが「割り箸程度」ではなく、今や「爪楊枝程度」であるという実感がある。

 時々(実際は頻繁に)思うことのひとつは、「キレて殺さないようにしよう」ということだ。

 常にスイッチに手が掛かっている。

 そのための準備として、

 「庭木の枝を払うためのナタを買って置こう」

 「室外機の線を保護するためにアルミのパイプを用意しよう」

 みたいなことを何となく考える。

 だが、それらを買っても、家には持ち帰らずに車に積んだままにして置くと思う。

 はっきりと意識はしていないのだが、「別の用途でも使える」と思うからだ。

 「煽り」を目にすれば、自分に対してのものであろうがなかろうが、誰彼関係なく使える。

 こういう思考が頭の中に同居しているのは、少し恐ろしいと思う。

 最近の事件で、ささいなことでオヤジがキレてしまい、凶悪な行為をしてしまうケースがあるが、あれは目の前の出来事に対し、怒っているのではない。

 日々の積み重ねだ。

 目の前の「些細なこと」は単なるスイッチに過ぎない。

 

 今日、電機量販店を覗いたら、プリンタのインクカートリッジの値札が半値でついていた。

 「たぶん、店員がずさんで値付けを間違えた」と思ったのだが、一応、レジに持って行った。

 やはり値段が違い、それだけでなく、専門店よりも割高だ。

 「じゃあ止めます」と言って止めようかと思ったが、そこでの会話のやり取りで「自分にスイッチが入ってしまう」可能性が高いことを実感した。

 店員の言い回しひとつでキレ、近くのプリンタを店員に投げつけるかもしれん。

 自身の怒りにリアリティを感じたので、あらゆる接触を止め、そのまま黙って払った。

 

 もちろん、「そのまま」ではない。

 腹のうちで、「イリスさま」に願を掛けた。

 「この会社の誰かに因果応報を教えてやってくれ」

 アモンではあの世に入ってからだろうし、きちんと理が立っているがイリスは違う。

 この世にいるうちから、災いを与えると思う。

 

 もちろん、何も起きない。

 念や祈願が現実に力を発揮することなど無い。

 ひとまずそう思っていると気が楽だ。

 自分の祈願のせいで誰かが破滅するとなるとさすがに気が重くなってしまうが、幸いなことにこういう力は「存在しない」と皆が思ってくれる。

 現実に何かが起きたとしても、咎められることは無い。

 

 出口を通る時についでに祈願を足した。

 「本機を安目にして、インクをバカ高く設定するような商売を行う会社の営業部長辺りにも雷を与えてくれ」

 もしイリスが本当に祟りを撒くのなら、本人ではなく、傍にいる弱い者だろうと思う。

 もちろん、総てはただの妄想だ。(常にこう言う必要がある。)

 でも、アモンやイリスに祈願すれば、自分自身がキレてしまうことが無くなる。

 きっと、こういう機会が徐々に増える。

 ま、当方がいつも味わっているような、「傍に誰かが立っている」感覚を与えるだけで十分だと思う。

 ホラ-映画よりもよっぽどキツい。

 ちなみに当方の場合は、部屋を暗くすると、すぐ傍に誰かがいる気配があるから、いつも灯りを点けたままにしている。

 「そんな気がする」のではなく、現実にそこに立っている。

 この感覚は現実に体験した者でないと分からない。

 姿が見えず、黒い影だけの時でも、「周囲の空間が歪んでいる」ので、「疑いなくそこにいる」と分かる。気のせいで周りの景色が崩れて見えることは無い。

 

 無表情に中年の店員を眺め、「コイツには小さい子供がいるのかどうか」を何となく量る自分を自覚すると、「やっぱり自分もいずれあっちの仲間になる」だろうと思う。

 ちなみに、五輪を開催しようがしまいが、飲食店をアルコール禁止にしようがしまいが、それとは関わりなく感染が拡大すると思う。

 そっちではなく、利用客の方がもはや「たが」が外れている。

 天気の良い日は、あちこちで地べたに座って酒を飲み、声高に話しているヤツらが沢山いる。

 そうなると、これからどれほど感染が拡大しても、それは五輪や飲食店のせいではない。

 これからはそういう者にも、イリスさまを紹介することにした。

 自身を宥めるにはこれしかないと思う。