日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第90夜 金縛り

先ほど、仮眠中にこんな夢を観ました。

古く、大きな百姓家に住んでいます。
300年以上前からあったという家屋で、部屋数は大小取り混ぜ20室以上あります。
家主が都会に住むようになり、私が買い取ったのです。

1人で住むにはさすがに広すぎ、日常的に使用するのはその中の数室だけです。
普段は勝手口近くの小さいほうの居間とすぐ隣の使用人控え室で暮らしています。

鏡を覗くと、私は50歳代で、過去に1度も見たことのない他人の顔をしています。
一応、自意識はあるけれど、うすぼんやりして、現実感がまるでありません。
どこか第三者的な視線で自分自身を眺めています。

田舎暮らしの中、訪問客がありました。
客は二人の男で、いずれも警察関係者です。
囲炉裏端に座って話を聞きます。

「この地域を訪れた人が何人も行方不明になっているのですよ」
初老の男が話し出します。
「ここは観るべきもののない山の中です。ここで行方不明になるって人たちって、いったい何しに来た人たちなんですか?」
囲炉裏の置き火を掻き立てながら、私は少し聞いてみました。
「最近、テレビで観光ル-トととしてこの地域を通り隣町へ抜ける道が紹介されたんですよ。『秘境を旅する』という番組だったかな。それで」
「しかし、ここはこんな山の中ですが、逆に行方不明になれるようなところもありませんよ。表立った道以外は斜面が急すぎて人は入っていけない」
「それもそうですね」
横から若い方の刑事が口を出した。

「ここではお独りで?住民票には奥さんとお子さんが記載されてますが」
再び、初老の刑事が話し出した。
家族か。記憶にまったく無いなあ。
「ここはあまりにも田舎なので、二人とも街のほうがいいと言って、そっちで暮らしています」
私の口が勝手に答えています。

「いやあ、元のお住まいの方も伺ったのですが、どなたもいらっしゃいませんでしたよ」
と、また若い方。
ちっ。下調べもして来てやがる。
「女房も娘も旅行好きだから、しょっちゅう二人で旅行に出かけるんですよ。去年はヨーロッパとオーストラリアに行ったかな。それぞれ二ヶ月も滞在してたから」
また、口が勝手に答えます。
「そうですか。道理で人の住んでいる気配がまったくありませんでした」

「ところで、捜索願が出ている人の件ですが、今のところ5人です。年齢層も様々で、二十代の女性から五十台の男性まで。写真をご覧になりますか。この中で見かけたことのある人はいませんか」
初老の刑事は大きなカバンからファイルを取り出し、写真を何枚か見せようとする。
私は何枚か手に取り、一瞥した。
「ここは旧道で普段は車も通りません。誰か他所の人が来れば目立ちますので自然と顔を覚えてしまいますが、このところは誰も」
「そんなはずはないですよ。現に・・・」
若い刑事がむきになろうとすると、老刑事が押しとどめた。
「まあ、ゆっくりお話を伺おうじゃないの」

囲炉裏では鉄瓶が湯気を吐き出し始めている。
私は土瓶に湯を注ぎ、少しの間、待った。
「ここには何もありませんが、良質の朝鮮人参が取れるのですよ。それに何種類かの薬草を加え、健康茶にするのですが、そのおかげでここに来て1年で、持病だった肝臓が治ってしまいました」
茶碗2つに茶を注ぐ。
「どうぞ。最初は甘く、その後は少し苦く感じますけど」
「こりゃどうも有難うございます」
2人は声を揃えて礼を言った。

「うっ」
1分も経たないうちに、若い方が苦しみだした。
「おい、どうした?」
老刑事が気遣うが、すぐに自分も腹を押さえた。
私は2人を平然と眺めている。
「この山特産の甘いトリカブトだよ。なあに、あっという間に苦痛はなくなるから」
2人は身をよじって苦しんでいたが、じきに静かになった。しかし、まだ死んではいないようで、時折体が痙攣している。
「今、楽にしてやるから」
私は立ち上がり、土間の方に向かう。
そこには薪をしばる縄が置いてあったのだ。

縄を拾い、振り返って囲炉裏端に戻ろうとするのだが、ここで私は男の体から離れた。
「この家の主人」の背中が目前に見えている。

あれ、オレって、この人本人じゃないじゃん。
今の今まで自分自身だと思っていたけど。
オレはオバケで、このオヤジに乗っかっていただけだ。
ようやくそのことに気づきます。

いつの間にか私は部屋の片隅に立っていました。
周囲には私と同じような男(オバケ)たちが何人も立っており、この家の主人と死体2つを眺めています。

ここで覚醒。

夢の間中、私は金縛り状態で、周囲の妻や子どもたちの話声を聞きつつ、この夢を見続けていました。
この数日は腹痛に襲われ、誰もいないはずの2階で足音がしたり、玄関のドアノブをガチャガチャと触る音が聞こえていたのですが、今夜の夢を観る前触れだったのかも。
この夢の間中、極めて不快な感覚がありました。

慌てて書き留めましたので文体が荒れていますが、ついさっき見た「夢の話」ということで。