日刊早坂ノボル新聞

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九戸戦始末記 北斗英雄伝 其の五 風雲の章

この章のあらすじ]
 疾風一行は三戸を脱したが、すぐに東一族の追手に追いつかれそうになる。しかし、三戸城中で疾風と東一刀斎との試合を見ていた工藤右馬之助が、先回りして待っており、敵をを追い払う。一行は右馬之助の手引きで、二戸宮野城へ入るが、宮野城では、一戸図書や津村伝右衛門ら、戦国を生き抜いている様々な地方領主を眼にする。
 正月十二日になると三戸南部では年賀式が開かれるが、三戸南部は、この式に参列しない「九戸政実らの叛意が明らか」であると決めつけ、直ちに宮野城への攻撃命令が下された。
 十五日に出陣、十七日には城攻めが開始されたが、宮野城内の守備は手薄だったものの、工藤右馬之助の軍略により、三戸勢を撃退した。
 疾風一行は、政実が自ら率いる「九戸の黒騎馬隊」を初めて目にし、驚嘆するのであった・・・。

[この章の登場人物]
○工藤右馬之助(推定40歳くらい) :九戸政実にも一目置かれる無類の鉄砲の名手。兄弟と間違われるほど疾風そっくりの容貌である。

○疾風(厨川五右衛門 :推定30歳くらい) :武芸の達人。岩手郡姫神山の麓の領主・日戸内膳の命により、三戸と九戸双方の地を偵察に訪れる。三戸での負傷により、臥している。

○玉山小次郎(17歳) :日戸内膳配下の玉山重光(後の玉山常陸)の甥。内膳の密命により、疾風と共に三戸に向かう。

○三好平八(45歳) :三好康長の隠し子の上方侍。葛西・大崎の一揆に乗じて北奥に落ち延びる。疾風たちと行動を共にすることにより、自己を回復していく。

○市之助(8歳)、雪絵(9歳) :盗賊に母親を殺され、疾風に救われることにより一行に加わった姉弟

○九戸左近将監政実 :九戸から二戸一帯の領主。心ならずも、三戸南部と闘うことになったが、北奥の民を案じ「敵は三戸ではなく、豊臣秀吉」と考えている。 

○北信愛 :陰謀に長けた南部家の執事(家老)。生き残りのために南部氏の支配を確立しようとする。

南部信直 :北信愛の導きで、先々代・晴政、先代・晴継を暗殺し、三戸南部の当主の座に着いたが、決断力、統率力に欠ける主君である。 

○北主馬允(しゅめのすけ)秀愛:北信愛の次男。文武に長けており、才覚は三戸家中随一である。

○北彦助(愛一):北信愛の長男で平舘寺田館主。兄弟は典型的な愚兄賢弟であり、弟に度量の面で劣る。 

○大湯四郎左衛門昌次 :鹿角鹿倉館の主。南部家のために長い間戦ってきたが、三戸勢が味方で殺しあうさまを見て、これを見限り、鹿角へ帰る。

[ミニ解説]
 いよいよ「九戸の戦」の緒戦となります。正月十五日に三戸を発し、十七日に宮野城を攻めたこの戦いは南部藩史の上では、完全に無視されています。しかし、三戸方が開戦したのは事実で、南部藩に関わりのない周辺地域では、この戦で三戸勢が大敗したことが記録されています。
 九戸政実が苦慮していたのは、前年の葛西・大崎と同様に、北奥が上方の兵によって蹂躙され、焼け野原になってしまうことでした。
 しかし、三戸南部の攻撃により、北奥は否応無しに大規模な戦乱に巻き込まれていきます。

 なお盛岡タイムスでの掲載は、7月下旬以降となります。